高野登さんの講演会に参加しました。


ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニー日本支社長の高野登さんの講演会に参加しました。
高野さんは、『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』という本を出版しておられ、サービスを感動のレベルに高めるためのリッツ・カールトンの精神を紹介しています。(2005年10月13日の私のブログ参照

高野さんのお話は……


初めてお会いする高野さんは、会った人が安心して心を開くような、ふわっとした笑顔が素敵な方でした。
リッツ・カールトンがどんなにお客様のことを考えているか、従業員どうしがどんなに良いチームワークを築いているか。聞けばきくほどリッツ・カールトンのファンになるお話でした。


著書と一部重複する内容もありましたが、次の二つの話は特に印象に残りました。


一つ目は、大阪リッツ・カールトンの採用希望者に志望動機を尋ねたときのエピソードです。ある若者は「父に推薦されました」と答えたそうです。きけば、宅配便の運転手をしている若者のお父さんは大阪中のホテルに出入りしており、そのなかで一番リッツ・カールトンが気に入った、とのこと。リッツ・カールトンでは荷物の運搬を手伝ってくれたり、一服するときに自分たちと同じ飲み物を持ってきてくれたりする。他のホテルでは一度もそんなに親切にされたことがない。従業員があんなに楽しそうに働いているホテルは他にない。だからリッツ・カールトンがいい、と。
リッツ・カールトンの精神は、お客様だけでなくバックヤードに出入りする業者まで感動させてしまうというのです。


もう一つは、マスコミでも紹介されたフロリダのリッツ・カールトンでのエピソードにまつわるお話です。
お客様から、「日の落ちたビーチで恋人にプロポーズしたいので、ビーチチェアを一脚だけ片付けずに残しておいてほしい」と言われたボーイは、特別なサービスを思いつきました。ホテルの他の部署の仲間の協力を得て実行したのは、プロポーズ成功と同時に、タキシードに着替えたボーイから花束とワインを記念にプレゼントする、というサービスです。感激した二人が、毎年の結婚記念日にリッツ・カールトンを訪れるようになったのは言うまでもありません。
高野さんのお話によると、他のホテルマンとの会合でこの逸話が話題に上ったとき、「やりすぎだ」という批判を受けたことがあったそうです。「お客様は、本当は二人っきりでプロポーズしたかったかも知れないじゃないか。ウチのホテルなら、そっとしておく方を選ぶ」との主張です。
その場では特に反論はしませんでしたが、講演で高野さんは次のように宣言されました。
   リッツ・カールトンは「やらない」体質より、
   少しくらい滑ってもいいから「やる」体質を選ぶ


「やらない」体質からは何も生まれない、という信念に裏打ちされたお言葉でした。
素晴らしい講演、ありがとうございました。

終了後のサイン・名刺交換


19時から20時半までの充実した講演が終了したあと、サインや名刺交換を希望する人の長〜い列ができました。
高野さんは翌日も朝一番の新幹線で移動するお忙しい方なので、サインや名刺交換は9時までに終わってくださーい。と、主催者が連呼していましたが、肝心の高野さんが、一人ひとり丁寧にお相手するので、列が全然短くなりません。
私の順番になったとき、ちょうど9時を回ったところでしたが、まだまだ後ろが長蛇の列でした。最後まで見届けませんでしたが、予定時間をいったい何十分オーバーしたのでしょうか。
講演会に来てくれた人をリッツ・カールトンのファンに、というお気持ちだったのでしょうか。プロの姿勢を見た気がします。


プロの姿勢といえば、高野さんとの名刺交換で、私はとんでもない失敗をしてしまいました。
著書の中でも、この日の講演の中でも、「クレド(信条)」というカードの話が何回も出てきました。これは、リッツ・カールトンの経営理念や哲学がすべて凝縮されたもので、従業員が肌身離さず持っているカードです。リッツ・カールトンに「クレドをください!」と厚かましくお願いできればよいのですが、従業員でもないのにいただける訳がありません。次善の策としてクレドを自作することを思い立ち、著書に載っていたクレドの写真を元にして、名刺より少し大きいカードを作りました。
この日、高野さんにお会いできて舞い上がってしまった私は、「サインお願いします」とこの自作のカードを差し出しました。高野さんは怪訝そうにカードをご覧になり、
  「著書にサインすることは構わないのですが、これにサインすれば、
   私がこのカードを認めたことになります。エンドゥスメントになるので
   サインできません」


そうですか。クレドというのは、従業員が原点に立ち返るべき、神聖なものだったんですね。「エンドゥスメント」という言葉は初めて聞くことばですが、なんだか、高野さんを困らせる行為をしてしまったことだけは分りました。
高野さん、ゴメンナサイ。
本当に申し訳ありませんでした。

この日の主催者は……


この日の講演会は、松山真之助さんが「校長先生」を務めるジェイカレッジの第9回目の講演会でした。
松山さんには去年の2月に初めてお会いし、その後しばらくお会いしませんでしたが、昨年12月からちょくちょくお会いします。先週も「すごい100冊倶楽部キックオフ」でお会いしたばかりで、ジェイカレッジのスタッフの方にも、「毎週のように参加しておられるんですね」と声をかけられました。


次回のジェイカレッジは、『会議でヒーローになれる人、バカに見られる人』(昨年11月30日のブログ参照)の著者で仕切り(ファシリテーション)のプロ吉岡英幸さんです。
次回も絶対出席しよう! と思ったら、ちょうどこの日に夜8時までの仕事が入っています。
残念!


真之助さん。第11回目を楽しみにしていますよー。