特捜取調室

副題:『国家の罠』20年目の再対決
著者:佐藤 優 西村 尚芳  出版社:新潮社  2026年5月刊  2,200円(税込)  252P


特捜取調室:『国家の罠』20年目の再対決    ご購入は、こちらから


2026年8月1日(土) 朝日新聞社説は、
「続く検察不祥事 個人より組織が問題だ」
という見出しで、検察の体質を糾弾している。


大阪地検特捜部では被疑者に対して「検察なめんな」と一方的に怒鳴り机をたたくなど長時間責め立て、東京地検特捜部では男性検事が、捜査対象で有罪となった女性と不適切な交際をした事案が発覚して法務省が懲戒免職処分としたという。
社説は、

組織全体を客観視する力が弱いのではないか。(中略)まずは第三者を入れての徹底的な検証が欠かせない。

と結んでいる。


上からのエラソーな物言いが気になるが、朝日新聞だけでなくマスコミ各社が検察の組織的問題を批判しているこの時期に、タイムリーな本を紹介する。

続きを読む

久しぶりに本を大量購入

ブログの前回更新からそろそろ1年。


書評を書く意欲の前に、まず読書意欲が湧いてこない状態が続いていたのですが、先週日曜、久しぶりに丸善・丸の内本店を訪れたところ、
  あっ、面白そう!
  これも読んでみたい!
が連発し、合計5冊購入しました。
一度にこんなに大量に(といってもたった5冊ですが)本を買うのは、たぶん7~8年ぶりです。


急に読書意欲が復活したのは、ありふれた理由からです。
10年ぶりにメガネを新しくしたのです。


新聞を読んでいても本を読んでいても、活字が二重に見えてイライラすることが多かったですが、「メガネの度をきつくすると視力が悪くなる悪循環に陥る」と半世紀前に聞いた(本当かどうか分からない)説を信じて、ずっとガマンしてました。
メガネを変えずにいたのが良かったのか悪かったのかわかりませんが、悲しいとこに度は進んでしまいます。とうとうパソコンのディスプレイまで見づらくなってしまい、ガマンしきれず先週メガネを新しくしました。


いや~、快適、快適。
長時間、活字を追うのが苦痛でなくなりました。


このまま読了する本が増えて書評を書く意欲が湧いてくることを願って、今日のところは、読書意欲を復活させてくれた5冊の書名と、なぜ興味を持ったかを記録しておくことにします。

続きを読む

父が牛飼いになった理由

著者:川﨑 秋子  出版社:集英社  2025年3月刊  1,100円(税込)  230P


父が牛飼いになった理由 (集英社新書)    ご購入は、こちらから


2024年1月に『ともぐい』で第170回直木賞を受賞した河崎秋子氏の初の新書である。

著者の実家は北海道別海町で酪農をしていて、著者自身も作家専業になる前は実家の手伝いをしながら羊飼いをしていた。

2009年秋、66歳だった父親が脳卒中で倒れて高次脳機能障害を発症してしまった。
自我とそれまでの記憶のほとんどを失ってしまった寝たきりの状態の父親を、施設に入るまでの12年間、著者は家族といっしょに在宅介護した。
「着替えも下の世話も車椅子での移動もなんでもやった」という。

父親は自分から昔話をする人ではなかったので、酪農家になった理由も、若い頃にどんなことを考えていたのかも、どんな人生を送ってきたのかも聞いたことがない。
いくら聞いても頼んでも、今となっては、話してくれる状態ではなくなった。

じゃ、調べてみよう。

ということで父親の生い立ちを調べはじめた著者は、親戚へのインタビューを通じて、朝ドラになるような祖父・祖母のエピソードや戦国時代にさかのぼる家系図に出会うことになった。

本書は、直木賞作家が400年以上のファミリーヒストリーに出会ったノンフィクションである。

続きを読む

私労働小説 ザ・シット・ジョブ

著者:ブレイディみかこ  出版社:KADOKAWA  2023年10月刊  1,650円(税込)  255P


私労働小説 ザ・シット・ジョブ    ご購入は、こちらから


著者のブレイディみかこ氏は、2019年に発刊した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で知られるエッセイストである。

『ぼくはイエローで……』(長いので文芸関係者は「ぼくイエ」と省略するらしい)は、イギリスの元底辺中学校に通う息子が、人種、貧富の差、ジェンダーなど様々な問題に出会い、悩みながら日常を過ごす姿を描いたエッセーで、「本屋大賞2019 ノンフィクション本大賞」はじめ、多くの賞を受賞している。

今も英国に住みながらライター活動をしている著者だが、本人が「なんだかわけのわからないところからヌルッと出てきた、得体の知れない執筆業者」と言うとおり、来歴が知られていない。

どんな前半生を送ってきたのかなぁ、と興味を持っていたので、「私労働小説」というタイトルに惹かれて手にとった。

続きを読む

人生の幸福を考える2冊

高校の同級生が「大人の修学旅行」を企画してくれた。

京都のお寺と紅葉を満喫する4泊5日の旅で、5年前に続いて2回目の旅行だという。
もちろん行く行く! と手を挙げ、同行させてもらうことにした。

参加者は13名。

北海道から来るメンバーが多かったが、東京、茨城、神奈川のほか、アメリカから駆けつける人もいた。

観光旅行は久しぶり。
楽しい楽しい5日間になった。

続きを読む

椿ノ恋文

著者:小川 糸  出版社:幻冬舎  2023年10月刊  1,760円(税込)  339P


椿ノ恋文    ご購入は、こちらから


記録的な猛暑も終わり、やっと秋が来た。
読書の秋を先取りするように、「ああ、こういうおだやかな小説っていいなぁ……」と思わせてくれた1冊を取り上げる。


『椿ノ恋文』は、2016年に発売された『ツバキ文具店』の続編の続編。
シリーズ第3作だ。

続きを読む

口の立つやつが勝つってことでいいのか

著者:頭木 弘樹  出版社:青土社  2024年2月刊  1,980円(税込)  269P


口の立つやつが勝つってことでいいのか    ご購入は、こちらから


著者の頭木(かしらぎ)氏は「文学紹介者」という聞き慣れない肩書きを名乗っている。
10代までは本を読まない人間だったが、大学3年生で難病にかかって13年も闘病生活を送った経験があり、そのときカフカの言葉に救われたことから『絶望名人カフカの人生論』を書いた。


病気と一生つきあう生活を送っていると、世の中の「ふつう」と自分にとっての「ふつう」がちがう場面に行き当たることが多くなった。


心の中の思いを形にしたいと思っていたときに、日経新聞夕刊のエッセイコーナーへの連載打診を受け、半年間連載した原稿が本書の基になっている。


本書は、社会の弱い立場や少数派に属している人の視点から、強い立場や多数派の人が当たり前に思っていることに、「それでいいんですか?」と疑問をなげかけるエッセイである。

続きを読む