人生の幸福を考える2冊

高校の同級生が「大人の修学旅行」を企画してくれた。

京都のお寺と紅葉を満喫する4泊5日の旅で、5年前に続いて2回目の旅行だという。
もちろん行く行く! と手を挙げ、同行させてもらうことにした。

参加者は13名。

北海道から来るメンバーが多かったが、東京、茨城、神奈川のほか、アメリカから駆けつける人もいた。

観光旅行は久しぶり。
楽しい楽しい5日間になった。

幹事役が予約してくれた見どころ食べどころを巡るのも楽しいが、横を歩く同級生とのおしゃべりも楽しい。

50年前の修学旅行では、女の子と話したい気持ちはあるのに何を話せばいいか分からず男子とばかり話してたっけ。
今回は何の下心もないので、女性参加者とも話が弾むこと弾むこと(笑)

入れ替わり立ちかわり、この50年の出来事を報告しあった。

仕事の話、趣味の楽器の話、子供や孫の話、親の介護や見送りの話、等々。
なかには配偶者を亡くした悲しみを語ってくれる人もいた。

それぞれの人生行路を語りながら、12人の同級生はみんな元気そう。
まだまだ前を向いて進んでいるのが嬉しかった。

前置きが長くなった。

今日の2冊は、「幸福って何だろう?」という問いに、違った角度から答えてくれる本を取り上げる。


書名:グッド・ライフ
副題:幸せになるのに、遅すぎることはない
著者:ロバート・ウォールディンガー マーク・シュルツ 児島修/訳  出版社:辰巳出版  2023年6月刊  1,870円(税込)  406P


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1冊目は、ハーバード大学による「幸せ研究」の結果を教えてくれる『グッド・ライフ』。

ハーバード大学で1938年に始まって今も継続しているこのプロジェクトは、健康と幸福を維持する要因を解き明かすことを目的に、累計1,300人にのぼる人々に継続的に調査を続けてきたという。

調査対象者に2年ごとに長い質問票を送っていろいろな質問に答えてもらう。
自由記述欄には、あらかじめ用意した質問だけでなく個人的な考えや思いを書いてもらう工夫もしている。

また、5年ごとにかかりつけ医から詳細な健康データを提供してもらって、健康と幸福の関係も分析できるようにする。

そして、約15年ごとに直接会って対面調査を行う。

大勢の調査をしていると調査中に有名人になった人もおり、ケネディ大統領もこの調査に協力した一人とのこと。

この研究の結果を報告する本書は、第1章で結論を述べている。

僕の書評はネタバレを自粛して書いているが、この本の帯にもカバーの折り返しにも結論が載っているので、今回は引用させていただく。

健康で幸せな生活を送るには、よい人間関係が必要だ。以上。

そんなこと分かってるよー、と言いたい気もするが、これが84年にわたり膨大なデータを集積した研究の成果なのだ。

この結論をふまえ、本書では「バートナーとのグッド・ライフ」、「家族のグッドライフ」、「職場でのグッドライフ」など、人生を幸福にするために心がけるべきことを10章にわたって述べている。

多くの調査対象者の人生のイベントが紹介され、自分の生き方を振り返るきっかけを与えてくれたあと、最後に大きな問いを発する。

それは、本書を読んで「人生を幸福にするための行動が足りなかった」と気づいた読者が感じてしまうこと。

「私の人生はもう手遅れなのか?」


という問いだ。

この問いの答えはネタバレ自粛にしておく。
読んでのお楽しみとして、2冊目の紹介に移らせていただこう。


書名:精神科医が見つけた3つの幸福
副題:最新科学から最高の人生をつくる方法
著者:樺沢紫苑  出版社:飛鳥新社  2021年3月刊  1,650円(税込)  366P


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2冊目は日本人の精神科医が書いた『精神科医が見つけた3つの幸福』。

この本のカバー折り返し部分に、

本書は「幸福論」ではありません!

と大きな文字で書いてある。

幸福を論じるのではなく、幸せになる方法を徹底的に「現実的」「具体的」に書いた実用書である、と宣言しているのだ。

では、幸せになる現実的で具体的な方法とは何か?

僕の書評はネタバレを自粛して書いているが(しつこい?)、この本でも第1章の結論を紹介しちゃうことにする。

 さあここで、有史以来、多くの人が頭を悩ませてきた「幸福とは何か」の問いに、本書ではたった10秒で答えを出してしまいましょう。
 ドーパミンセロトニンオキシトシンが十分に分泌されている状態で、私たちは「幸福」を感じる。つまり、脳内で幸福物質が出た状態が幸せであり、幸福物質を出す条件というのが「幸せになる方法」であると言えます。


心の感じ方はホルモン次第ということらしい。
なんと簡潔で即物的なお答え……。

3つのホルモンは3大幸福物質とも呼ばれ、次のような優先順位と働きがあるという。

  • セロトニンが分泌されると、安らかな、おだやかな幸福感を感じる

   → 健康の幸福

  • オキシトシンが分泌されると、人やペットとのつながりや愛情を感じる

   → つながりと愛の幸福

  • ドーパミンが分泌されると、心臓がドキドキするような高揚感、幸福感を感じる

   → お金、成功、達成、富、名誉、地位などの幸福

優先順位というのは、まず1番目の健康の幸福が満たされなければ、2番目、3番目の幸福を追求することはできない、という意味である。

本書は、この3種類の幸福について、それぞれの幸福を手に入れる方法を7つずつ紹介し、具体的なやり方や習慣化する方法まで提案して「現実的」「具体的」に読者を導いてくれる。

具体的なノウハウを詳しく知りたい人は本書を手に入れてもらいたいが、サンプルとして2つ紹介させていただく。

一つ目は、休日の過ごし方。

休日をダラダラ過ごしてしまうと、「1日何もしないで過ごしてしまった……」と感じてしまう人もいるが、その考え方は間違っている、と著者は言う。

「ダラダラして1日を過ごす」って、素晴らしい時間の使い方だと思います。究極のリラックスです。どこが悪いのでしょうか?


せっかく体を休めることができたのに、に罪悪感を感じてしまっては元も子もないのだ。
なるほど、なるほど。

もう一つは、物欲との付き合い方。

物欲に支配されてはいけないが、銀行口座の残高を増やすことに取り憑かれる「貯金大好き病」になってはいけない、と言っている。

「お金を使う」「物を買う」「お金を払ってサービスを受ける」ことは、「幸せ」になるために、必要な行為なのです。


お金の使い方を知らないアリになるよりも、お金を楽しんで使いながら毎日を謳歌するキリギリスになれ、と言うのだ。

常識に固まってしまった頭を揉みほぐしてくれるアドバイスが気持ちいい。