問題は「数字センス」で8割解決する


著者:望月 実  出版社:技術評論社  2008年8月刊  \1,554(税込)  222P


問題は「数字センス」で8割解決する    購入する際は、こちらから


著者の望月さんは公認会計士
数字と会計のプロです。


2年前に『数字がダメな人用 会計のトリセツ』を発刊し、会計の難しい世界を一般の人に知ってもらうという、出版界の「さおだけ」部門に登場しました。


単著としては3冊目になる本書では、「会計」という応用分野の根底にある「道具として数字」に焦点をあて、一般の人の数字センスを磨いてくれる話題をたくさん紹介してくれています。


私の専門はコンピュータですので、「道具としての数字」は日常的に使っていますし、数字センスもあるほうだと思っています。


さっそく余談になりますが、先日、買い物にいく車中で家族と雑談していたとき、カミさんが言いました。
「小学校で習う分数のかけ算なんて、実際の生活で使わないよね。
 中学校で習った方程式も、卒業してから1回も使ったことがないし……」


私は不用意にも「そうかな、僕は仕事で使ってるよ」と言ってしまいました。


「そりゃ、あなたの仕事には必要でしょうけど!
 私はふつうの人の話をしているの!!
 あー、やだやだ。だから理系はキライだよ」


しまった。また、やっちゃった!
「そうだねぇ」と言っておけばよかったのに……。



まあ、そんな私ですから(笑)、本書に載っている話題の数々は、ほとんど知っていることばかりでした。
個人的には本書で数字センスが良くなることはありませんでしたが、代わりに、難しいことをわかりやすく説明する望月節に舌を巻きました。


望月さんは、まず、「原油価格が上がると何が起こるでしょうか?」というような、日常生活に密着したクイズを出します。


「ガソリンが上がる」「不景気になる」などの予想される読者の答えを紹介したあと、「損をする人の反対に、得をする人は誰でしょう」と一般人が気づかない発想を明かしてみせ、最後に、「問題発見力の低い人」と「問題発見力の高い人」の考え方を対照的に示しました。


問題発見力の高い人も、はじめは問題発見力の低い人と同じことを考えますが、その後、
  「でもまてよ、(中略)よし、原油価格が上がることによって儲かって
   いる人や企業を探して営業をかけてみよう」
と、ひとあじ違う発想をしてみせます。


この「でもまてよ。よし!」を何回も読むころには、読者の数字センスが、知らず知らず磨かれてきたことに気づきます。


なぁるほど。こうやって、分かりやすく説明するといいんだなー。



数字と少し離れますが、第2章では、望月さんの新人時代の失敗体験を通じて、決められた時間内に問題を解決することの大切さも訴えていました。


望月さんが新人の頃、日曜の午後1時に上司に報告書を見せるはずだったのに、内容にこだわっているうちに締め切りを過ぎたことがありました。
やっと完成させたら夜10時になっていて、
  「君がきちんと仕事したのはわかる。けどさ、これからはちゃんと
   時間内に仕上げてね」
と言われたそうです。


わかっちゃいるけど、ついつい、全体スケジュールよりは、目の前の仕事に目がいってしまうのが人情というもの。完成度60%でいいから締め切りに間に合わせるべき、という望月さんのアドバイスは、スッと腑に落ちていきました。


第3章の 数字で「伝える」力をつける、にも参考になるプレゼンテーションのノウハウがたくさん載ってます。


自分の伝えたいことのために、うまく数字を使うテクニックは、形を変えれば、数字でウソをつく方法にも通じます。自分ではウソをつかなくても、他人が使う数字のウソをみやぶるのも、自己防衛のために大切なことです。


いろんな意味で数字センスが磨かれる一書でした。