脳疲労に克つ


副題:ストレスを感じない脳が健康をつくる
著者:横倉 恒雄  出版社:角川SSC新書  2008年5月刊  \777(税込)  172P


脳疲労に克つ―ストレスを感じない脳が健康をつくる (角川SSC新書) 購入する際は、こちらから


茂木健一郎著『脳を活かす勉強法』という本を、先日読みました。
よく売れているようで、8月5日には60万部突破記念講演会が三省堂書店で開催されます。(開催案内は、こちらを参照ください)


勉強本が好きな方には参考になる内容がたくさん載っていました。本メルマガでも紹介しようかと思いましたが、やめておくことにします。出版から半年もたったベストセラーは、他のネット書評で先に紹介されていて、後追いで書こうと思っても、内容が二番煎じになってしまうからです。
知らず知らず、私のブログでは他の人が取り上げていないような、少しマイナーな本が(笑)多くなっています。


『脳を活かす勉強法』の代わりに、本日とりあげるのは、やはり「脳」をキーワードにした一冊。ただし、茂木さんの「勉強本」とちがって、ジャンルは「健康本」です。



著者の横倉さんは、1990年に「健康外来」という変わった名前の外来をはじめました。以来、医療と健康ということに関して、先駆者の一人としてじっくり研究してきた成果を本書で明かしています。


ただし、健康オタク的な人がこの本を読むとがっかりするかもしれません。
なにしろ、「はじめに」で、
  「健康になろうと思って、この本を読んではいけません」
と読者にクギをさしているのですから。


そもそも、「健康」って何でしょう?


西洋医学を学んだ横倉さんは、かつては「健康とは病気ではない状態」と考えていました。


しかし、ふつうのお医者さんが、検査結果に異常がないと「どこにも異常はありません。きっとストレスです」といって何の治療もしない姿を見て疑問がわきました。


患者さんは、身体の調子がおかしいと感じて受診しにきたのです。何もせずに帰してしまっていいのだろうか?


ところが、東洋医学では、患者さんに異常がなかったとしても、調子の悪さ、具合の悪さを少しでも改善しようとします。


いままでの医学的常識をいったん忘れて横倉さんが考えた健康の概念とは、「病気も健康の一部である」という考え方でした。この横倉流の健康観から、次のような“非常識”な結論がつぎつぎと導かれていきました。

  • たとえがんに冒されていても、「健康度の高い」人がいる
  • 健康かどうかは医者が決めるのではなく、その人自身の“心=脳”が決める
  • テレビの健康番組は、病気の話ばかりを取り上げる病気番組だ。
  • 健康のために良いことを勧める「健康教育」の多くは「健康脅迫」だ。
  • 病院の食事の時間が決まっているのはおかしい。病気の人だからこそ、お腹がすいたときに食べるようにすべき。


極めつけは、これ。

  • 「規則正しい生活」はかえって不健康になる?


今までの常識から離れ、本当の健康をめざすためには、「脳疲労」を解消する方法を学ぶ必要がある、というのが本書のテーマです。


疲労を解消する具体例として、最初に取り上げているのが、「快食療法」です。
おお。ちょい太の私むきじゃありませんか。


いつもはネタばらしをしない私の書評ですが、今回は、この「快食療法」の方法を紹介してしまいますね。


快食療法の基本――お腹がすいたときに、好きなだけおいしく食べる。


具体的には、次のような行動です。

  • お腹がすいていなければ、無理に朝食を食べなくても良い。
  • 夜も、あまり食べたくなければ、少ししか食べなくても良い。
  • 中途半端な時間でも、お腹がすいたら、好きなものをたっぷり食べる。
  • 食後には甘いものを食べると良い。
  • 「食べ過ぎてしまった……」などと罪悪感を持たない。


ええっ? 好きなとき好きなだけ食べたから太っているんじゃないの?


横倉さんの「快食療法」は、通常のダイエット常識からすると、非常識のかたまりです。
「甘いものは控えめに」というダイエット常識に対しても、そんなことはない、と否定したあと、「ケーキなら1ホール食べよう!」と言い切るのを聞くと、もう呆れるしかありません。


なぜ、こんな非常識な方法でもいいのか。
その理由は、本書をお読みいただきましょう(笑)。


かつて中性脂肪が平均値の8倍もあった、という横倉さんのダイエット後の写真は説得力がある。ということだけ報告しておきます。
ちなみに、15年以上前の太っていた頃の横倉さんと、今の横倉さんの写真を2枚ならべた下には、「髪は減ったが体重も大幅に減った」とキャプションが付いています。


横倉さん。ユーモアセンスもいい線行ってますよ!


この後、第3章「五感をもっと活用して健康脳に」、第4章「脳疲労を防ぐ生活習慣美容のススメ」と、脳を疲れさせないことによって、生き方自体を健康にさせる方法をていねいに教えてくれます。


横倉さんの考え方は、常識の鎖を解き放って、脳と人生を自由にする力を持っているように感じました。


生きることに何か苦しさを感じている人、生き苦しい人は、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。