逆転戦略


副題:ウィルコム「弱み」を「強み」に変える意志の経営
著者:鈴木 貴博【監修】  出版社:ダイヤモンド社  2005年1月刊  \1,785(税込)  234P


逆転戦略 ウィルコム-「弱み」を「強み」に変える意志の経営

5月末にフジテレビで「ザ・ヒットパレード」というドラマを見ました。テレビの勃興期に日本の芸能界を改革・躍進させた男、渡辺プロダクション社長・渡辺晋の物語です。
ヒット番組を連発し、次々とスターを送り出す成功の過程は、見ていて気持ちよいものでした。
その渡辺プロダクションも、芸能界のトップを走り続けることはたいへんなようです。
部外者から見ると、ホリプロジャニーズ事務所、お笑いの吉本興行の躍進が目立つように見えるのですが、実際はどうなんでしょうか。


業界の栄枯盛衰というのは、戦国絵巻に似て、興味をそそられるものですね。


今日とりあげた「逆転戦略」も、通信業界の歴史や現在の動向を分析した一書です。
分析の結果、著者は、
  PHSウィルコム社が通信業界に“逆転”をもたらすのでは?
と結論しました。


なかなか、刺激的な本ですよ。




かつて携帯電話はレンタルで、保証金10万円、新規加入料約4万6千円、基本料金が2万円を超えていました。おまけに、業界で「第一次参入」とよばれる1980年代後半、当時の郵政省は1地域2社という参入数制限がありました。
NTTが1社ぶんをおさえてしまうと、残りはもう1社。
しかたなく、当時のIDOやセルラーグループが地域を分け、自分の会社がカバーできない地域を他の会社に接続してもらう方式で対処します。
なんと、国内でローミングサービスしていたのですよ。


ほんの20年前のこととはいえ、隔世の感がありますね。


1992年にNTTドコモが独立しましたが、今のような巨大な市場が見えていたわけではなく、民営化後のNTTから何か分離分割させなければカッコつかない、という政治的な圧力による独立でした。


その後、1994年にデジタルホングループとツーカーホングループが第二次参入。NTTもレンタル制度を廃止して、機器買い取り制度に移行します。
同じ年にPHS会社3社(NTTパーソナル、DDIポケットアステル)がサービスを開始すると、「安く使える携帯電話」として若者の間でブームを巻き起こしました。
特に、DDIポケットの文字メッセージサービス「Pメール」は、ポケベル世代を取り込み、iモード誕生の下地にもなっていきます。


その後、iモード、写メール、パケット定額制、おサイフケータイなど、次々と各社で新しいサービスを投入するのは、ここ6〜7年の出来事ですので、まだまだ記憶に新しいところでしょう。


かたや、携帯電話会社は、コツコツと基地局の増設、第3世代基地局への移行などに莫大な投資を行っています。
ユーザー離れを起こす最大の原因が、「つながらない」という評判だからです。


他にも、新機種がほとんどタダで手に入るイセンティブモデル(販売奨励金制度)は日本独自のものである、とか、電波は有限な資源なのでもうすぐ伝送情報量に限界がやってくる、ということが分かってくると、ちょっとした業界通になった気分になれますよ。


さあ、そこで、なぜウィルコム社が通信業界に“逆転”をもたらすのか。


詳しくは本書を読んでいただくとして、ヒントは「限られた電波資源を有効に活用できるのはPHS」ということです。
もし、完全定額制――音声もノートPCもつなぎ放題というサービスをPHSが実現したら、業界地図が塗り替えられるかもしれません。


ドキドキしてきませんか?