「お通し」はなぜ必ず出るのか ビジネスは飲食店に学べ


著者:子安 大輔  出版社:新潮新書  2009年5月刊  \735(税込)  206P


「お通し」はなぜ必ず出るのか―ビジネスは飲食店に学べ (新潮新書)    購入する際は、こちらから


『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を連想させる書名です。


『さおだけ屋……』は、会計的ものの見方で社会の出来事を謎解きしてくれました。
本書は、飲食業界のプロデュースやコンサルティングに携わる著者が、飲食店を中心とした客商売の勘どころを教えてくれる、どちらかというと一般読者よりも業界関係者に向けたビジネス解説本です。


私は飲食業界人ではありませんが、客としていろいろなお店に出入りするたびに、ついつい店の繁盛ぐあいやサービスの善し悪しをチェックしてしまうタイプなので、とても興味深く読ませてもらいました。


著者の子安さんに失礼ですが、飲食業というと3K職場というイメージがあります。
勤務時間が長く、給料は少ない。チェーン店などでは店長になると収入が減ることもあるので、将来の希望が描けない。腕の良い職人になって独立しなければ、とてもやってられない。
――そんなイメージです。


ところが、子安さん、飲食業界は未成熟と認めながらも、きちんとやれば利益率も良く、やりがいのある仕事だと言っています。


食材を料理に“加工”するのは製造業と同じですし、どの銘柄のお酒を仕入れてどう売るかという観点で見れば流通業や小売業とも共通点があります。もちろん、接客はサービス業そのものです。
他の業界の改善例を取り入れる余地があり、それによってこれから大きく伸びる可能性があるのが飲食業界、とのこと。
何しろ、2007年の市場規模は24兆円ですので、同じ年の車(乗用車)市場17兆円を大きく上まわっているのです。


ちょっとイメージ変わりますね。


子安さんは、そんな希望の持てる飲食業界をひらくため、良い店と悪い店を分析し、
  「女性に人気のヘルシー店」は潰れる
  「オーナーの夢だった店」は潰れる
等のセオリーを挙げています。


大きなチェーン店なら大丈夫かというと、やはり激しい競争はまぬがれないようで、私の近所でも、チェーン店ほど入れ替わりが激しいように思います。むしろ、近所の「ちょっと美味しいお店」のほうが、店を増やすでもなく、さびれるでもなく、何十年も淡々と営業しています。


「粉モノ」は本当に儲かるのか、期待度と満足度の関係性、失敗の5つのパターン、ショッピングセンターはおいしいか、ランチは儲からない? など、思わず先を読みたくなる話題のほか、ファンド方式の新事業、食の海外進出などの新しい動きも抑えています。


飲食業界人の方は、業界の基本構造を再確認し、新しいサービスや事業のヒントを見つけることができるでしょう。
一般の人でも、外食を楽しみにしている人になら、本書も楽しめると思います。