ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法


2005年11月刊  著者:ディズニー・インスティチュート
出版社:日本経済新聞社  \1,470(税込)  210P


ディズニーが教える お客様を感動させる最高の方法


私の家族は全員ディズニーランドが大好きで、娘が幼稚園生になってからのこの1年足らずで3回も行ってしまいました。
以前、このブログでもキャスト(従業員)の心配りに感心したエピソードを紹介しましたが、ディズニーランドにはゲスト(来園者)を感動させる門外不出のノウハウがある、と聞いたことがあります。
その秘密のノウハウを学べるかもしれない、と思い、本書を手にとりました。


読み始めてすぐに分ったのは、ディズニーはノウハウを決して秘密にしているわけではなく、むしろ積極的に公開している。ディズニー・インスティチュートという会社が顧客満足度を上げる方法を一般の会社にコンサルタントする事業をしている、ということでした。
なぁーんだ。門外不出のノウハウなんかじゃないんだ。


本書を読んで、初めて知ったことがたくさんありました。


まずは、ウォルト・ディズニーがなぜ成功したか、です。
彼は、まずアニメ制作で成功しましたが、その成功の秘密は、ほかの人たちが時間や金や労力をかけたくないと思うような細部に、徹底的に注意を払うことでした。
たとえば、アニメに登場するラビットがランプに頭をぶつけるシーンで、ランプの影が描きこまれていないことに満足できません。ほとんどの人が気にしないようなわずかなシーンを改良しつづけ、感動を呼ぶ映画を作ったのです。
そのウォルトの細部まで神経を注ぐ強い意志と具体的方法がアニメーション制作チームに広がり、遊園地事業を開始してからは、遊園地スタッフにも受け継がれました。


ウォルトが遊園地の細部をチェックしながら、スタッフに注意を与えている逸話には笑いました。
ウォルトがジャングルクルーズに試乗したところ、たっぷり7分かかるはずのクルーズが、ボートの係の操縦が速すぎて4分半で終わってしまいました。責任者を呼んでウォルトが言いました。
  「このカバにどれほど金をかけたか知ってるかい?
   わたしは、これをみんなに見てもらいたいんだ。仕事に飽きた係員が
   時間を繰り上げるなんて、とんでもない話だぞ」
東京ディズニーランドジャングルクルーズにも、水中からカバが顔を出す場所があり、確かに見せ場のひとつです。せっかく苦心した見せ場を飛ばされたウォルトが、どんなに情けない思いをしたかを想像すると、思わずクスリとしてしまいます。
完璧な速度で運行できるよう、ボートの操縦士にストップウォッチを使わせることにしたのは、言うまでもありません。


あと一つだけ感心したことを紹介します。
ディズニーランドでアトラクションのスタート係りをするキャストは、人指し指と中指を進行方向に向けて出発の合図をします。
以前から、「これはディズニー特有のポーズなのかなー」と思っていましたが、その通りでした。何本かの指で、または手を開いて方向を示すことをディズニーの新入りキャストは最初に教えられるそうです。
世界のいろいろな文化の中には、指一本でものを指し示すのを無礼だと受けとめる文化もある、というのがその理由です。世界中のゲストを迎えるディズニーランドでは基本中の基本、とのこと。


ディズニーファンの人も、そうでない人も、ディズニー・マジックの秘密を覗いてみてはいかがでしょうか。