副題:ディズニーランドで本当にあった心温まる話
著者:中村 克 出版社:サンクチュアリ・パブリッシング
2009年3月刊 \1,260(税込) 185P
本書の著者は、東京ディズニーランド開業時から現場運営の責任者を務めてきた元スーパーバイザーの中村さんです。
ディズニーのテーマパークでは、お客様をゲスト、従業員をキャストと呼びます。
キャストの勤務前のミーティングなどで、中村さんはお客様から寄せられた感謝の手紙を紹介し、ディズニーランドをもっと楽しいところにしようという意欲を沸きたたせてきました。
パークの中で実際に起こった心あたたまる物語ばかり33個、「あとがき」を含めると34個も集めたのが『最後のパレード』です。
いつもネタばらし自粛でお送りしている私の書評ですが、今日は第1話のさわりを引用させていただきます。(本書の公式ホームページで同じ箇所を音楽入りの動画で紹介しています)
「天国のお子様ランチ」
数年ぶりに主人とディズニーランドに遊びに行きました。
この日は、1年前に亡くした娘の誕生日であり命日でした。娘はからだがとても弱くて、生まれて間もなくこの世を去ってしまったのです。(中略)
「子どもが生まれたら、ディズニーランドに連れて行きたい」という夢を果たすこともできませんでした。そこで主人と話し、その日は供養のために訪れたのです。
家を出る前にガイドブックを見て、かわいいお子様ランチがあることを知りました。
それを娘にぜひ食べさせてあげたいと思い、ワールドバザールにあるイーストサイド・カフェに入ったのです。
ところが、そのお子様ランチは8歳以下の子どもにしか注文できないメニューだとわかってすぐにあきらめました。(中略)ただ事情だけでも知ってほしくて、ついお店の人に話してしまいました。
するとお店の人は「では3名様、こちらへどうぞ」と言いました。そして隣の4人掛けテーブルに子ども用の椅子を置き、私たちを笑顔で迎えてくださったのです。
「本日はよく来てくださいました。どうぞご家族で楽しんでいってください」
その方はまるで我が子がその場にいるように、私たちをもてなしてくださいました。
私は感激で胸がいっぱいになり、その場で涙があふれてしまいました。(中略)
娘は天国にいってしまったけれど、これからも愛し続けて、一生一緒に生きていこうと思います。また娘を連れて、そちらへ遊びに行きたいです。
本書には、このほか、末期ガンの患者、老人、体の不自由な人などが多く登場します。
日常生活でつらい思いをしていればいるほど、この夢と魔法の王国で出会うやさしい思いやりに心動かされ、それを見ている私たちも温かい気持ちになってきます。
おもしろいことに、お客様に感謝されたことをキャスト自身が「忘れられない思い出」として語っている物語もたくさん登場します。
知らず知らず心のバリアーをゆるめてしまう、あの不思議な空間に、また行ってみたくなっちゃう!
2009年05月02日 追記
本書の内容の一部に、著作権者に無断で使用した箇所があるとの報道があり、版元の社内調査でも、著作権侵害の可能性が高いエピソードが新たに6編判明したそうです。
(詳しくは、版元のサンクチュアリ・パブリッシングさんが自主回収を決定したことを報じた出版業界紙「新文化」(→こちらです)5月1日の記事をご覧ください)
いい話がたくさん書かれていただけに残念です。
コメント欄の「とおりすがり」さん他、5月1日付け「読書ノート」にも、この件に関してコメントの書き込みがありましたことをご報告します。(5月1日付け記事は、本書と別内容の記事なので、コメントは削除させていただきました)