ディズニーそうじの神様が教えてくれたこと


著者:鎌田 洋  出版社:ソフトバンククリエイティブ  2011年10月刊  \1,155(税込)  158P


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わが家はディズニーランド、ディズニーシーが大好きで、このところ、年に4、5回は行っている。
ディズニーリゾートの一番の魅力は、パークの中に入ると、外の世界から遮断された「夢と魔法の国」に浸れることだ。キャストと呼ばれる従業員は親切でニコニコしているし、掃除が行きとどいた園内にはスケールの大きなお城や異国風の建物、楽しいアトラクション(乗り物)が迎えてくれる。


多くのディズニー本がこの「夢と魔法の国」の秘密を明かしているが、本書は、そうじを通じてディズニーの魔法を実現した4つのエピソードを紹介している。キャストの中でも最も地味な「カストーディアル」と呼ばれる清掃担当者は、どのようにウォルト・ディズニーの精神を体現しているか見てみることにしよう。




本書の著者鎌田洋氏は、新婚旅行で米国アナハイムのディズニーランドを訪れたとき、あまりの楽しさに魅せられてしまった。「もしかしたら、ここは本当に夢の国なのかもしれない」と感じ、すっかりウォルト・ディズニーの魔法にかかってしまったという。


帰国してから、商社の営業職として忙しい日々を送っていた鎌田氏は、東京ディズニーランドの建設計画を知る。自分も「あの世界で働きたい」と思い、妻にも相談せずに商社を辞めてしまった。


しかし、「夢」は簡単に実現しなかった。
入社試験に4回も落ち、カリフォルニアのディズニーランドへ直談判しにいってもダメだった。5回目の入社試験でやっと合格したのだが、配属先を見た鎌田氏は目の前が真っ暗になったという。
配属先は夜間の清掃部門(ナイトカストーディアル)だったのだ。にぎやかな夢の国で働けると思っていたのに、お客様が帰ったあと夜勤でそうじをする部署とは……。鎌田氏は落ち込まずにはいられなかった。


しかし、実地訓練のためにアメリカからやってきたチャック・ボヤージンに出会い、鎌田氏は与えられた仕事に対する考え方が変わった。
チャック・ボヤージンは、ウォルト・ディズニーがこよなく信頼を寄せ、ディズニーの世界で「そうじの神様」と称えられた人物である。


「そうじの神様」から鎌田氏が何を学び、何を後輩たちに伝えていったのか。
4つの物語を語る前に、鎌田氏は次のように言っている。

みなさん自身が4つの物語の中に秘められたキャストたちの人間ドラマを通して、「ディズニーランドで働く人たちが放つ本物の輝き」を見つけ出してほしい


ディズニーの魔法の秘密を分析したり解説したりするのではなく、自分が経験した感動的なシーンを読者に伝えるなかで何かが伝わるはず、という姿勢で書かれている。
客観的に、ビジネスの視点でディズニーを捉えようとする人には伝わらないかもしれないが、僕のように「ディズニー大好き!」という読者には、共感できる箇所が多いだろう。


ディズニーファンにお勧めの一冊である。

参考書評

  • ディズニー・インスティチュート著『ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法』(2006年2月のブログ)
  • リー・コッカレル著『感動をつくる――ディズニーで最高のリーダーが育つ10の法則』(2009年3月のブログ)