副題:ディズニーで最高のリーダーが育つ10の法則
世界最高のマネジメント教育機関:ディズニー・インスティチュートが教える基本原理
著者:リー・コッカレル/著 月沢李歌子/訳
出版社:ダイヤモンド社 2008年11月刊 \1,575(税込) 259P
前回に続き、ディズニーランド大好き! というディズニーファンにはたまらない本を取りあげます。
前回の『最後のパレード』は、ディズニーのパーク内で起きたエピソード集でしたが、今日の一冊は、どうやってディズニーが感動のサービスを作りあげたかを明かし、ディズニーのやり方を10通りの法則に体系化して具体的に教えてくれるリーダー論です。
ディズニーが社内で行っている従業員教育を外部の企業研修にも提供するディズニー・インスティテュートという教育機関があります。
その教育内容を公開した『ディズニーが教えるお客様を感動させる最高の方法』という本を3年前に取り上げたことがあります(バックナンバーはこちら)。本書の著者リー・コッカレルは、このディズニー・インスティチュートを代表してリーダーシップ研修やプロフェッショナル研修の講師を務めています。
副題にあるとおり「10の法則」が示され、10の法則は、さらに細かく「定期的に現場を偵察する」とか「従業員の名前を覚える」など具体的な方策に分解され、ていねいに解説されています。
詳細は紹介しきれませんので、コッカレルのリーダー論の基本をひとつだけ挙げておきます。
それは、
「ディズニーは、ゲストと同じようにキャストに接することで、キャスト
を教育している」
というディズニーの「黄金律」です。
ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート上級副社長を10年以上務めるなかで、コッカレルはこの黄金律を定着普及させてきましたが、おもしろいことに、若き日のコッカレル自身は、この黄金律から一番遠いところで仕事をしていました。
ディズニーに入社する前はホテル業界でたたきあげてきたコッカレルです。
仕事はできるものの部下への思いやりに欠ける彼は、部下にビール瓶で殴られたり14針も縫うケガをさせられたことがありました。
バーテンダーがカクテルの料金を余分に請求している、という苦情を聞いたコッカレルは、一言も弁解させずに伝票をすべて見せるよう命じたことがあります。怒りにふるえるバーテンダーがバドワイザーの瓶で彼の顔を殴った事件がきっかけで、従業員一人ひとりに敬意をもって接することの大切さを学ぶことになりました。
しかし、まだまだ骨身にしみていません。
2回目の事件は、人種差別的発言をした従業員を叱ったときに起こりました。人差し指を突きつけながら、「きみは失礼なやつだ」と言ったことで、14針縫うことになったのです。
彼の通ったあとには死体しか残らない、と噂されるようになって、やっとコッカレルはやり方を変えることにしました。
独裁的で支配的な管理者から、包容型のリーダーに生まれ変わったのです。
コッカレルは、キャストたちが働きやすく力を発揮できるよう、環境を整え、苦情や意見をよく聞き、一方で費用を抑制し、組織を改編し、ディズニーを経営的にも儲かる企業に成長させてきました。
キャストたちが作りだしてくれる魔法にしびれるのもいいですが、コッカレルやディズニーの手法を学び、自分の職場を夢と魔法の王国に近づけるのも最高ですよ。