校閲ガール トルネード


著者:宮木あや子  出版社:KADOKAWA  2016年10月刊  \1,404(税込)  219P


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毎週水曜日、夜10時から日本テレビ系列で放送している『地味にスゴイ! 校閲ガール』の原作本である。


今日取りあげる『校閲ガール トルネード』はシリーズ第3作。


ぼくはシリーズ第1作の『校閲ガール』からこの「読書ノート」で取りあげていて、第2作『校閲ガール ア・ラ・モード』のレビューに、次のように書いた。

みんなが応援すれば、3冊目も出るかもしれないから、買ってあげてね〜。


校閲部」という地味な職場を舞台にした小説だから、少しでも盛り上げるつもりで書いたのだが、まさか石原さとみ主演でテレビドラマになるとは思わなかった。


ドラマに後押しされたように出版されたのが、この第3弾『校閲ガール トルネード』だ。


物語の主人公は、紀尾井町にある景凡社という出版社に勤める女性社員。
小学校のころから景凡社の雑誌を読んで育ち、
  「ぜったい景凡社のファッション雑誌の編集者になる!」
と決めて、難関を突破して就職を勝ち取った。


なのに、配属されたのは校閲部。


どうやら、彼女の名前が河野悦子(こうのえつこ)なので、「名前が校閲っぽい」というだけで配属先を決められてしまったらしい。


こんなはずじゃなかった、とふてくされた悦子だったが、気を取りなおして校閲に取りくむ。
そんな悦子のまわりで、つぎつぎと事件がおこる。
ひとつ片付いたと思ったらまたひとつ、と事件がつづき、悦子の活躍で事件は解決していく。


この原作でどんなテレビドラマができるか興味津々で、毎週たのしみに『地味にスゴイ!』を見ている。


ファッショナブルな女の子が主人公ということで、中3の娘も一緒に見ているので、3人家族の我が家の視聴率は66%(!)の高視聴率である。


原作を先に読んでいるので、主な登場人物は同じなのに、こまかい設定が違っていることに気づく。


「名前が校閲っぽい」という主人公の名前は同じでも、原作では新卒で景凡社に入社していたのに、ドラマでは中途採用に何度も挑戦してやっと入社した。


社内の女性誌編集部にいる「森尾」は、原作では同期入社の同僚で、ドラマでは高校の後輩。


悦子の恋人も、原作ではアフロヘアーのイケメンモデルで「ゆっくん」と呼んでいるのだが、ドラマで菅田将暉演じるイケメンモデルはふつうのヘアスタイルで、悦子から「ゆきとくん」と呼ばれている。


ドラマのなかには、原作と大きく離れてしまうものもあるので、このくらいは許容範囲なのだろう。



連続ドラマには、毎回「いつもの見せ場」がある。


『地味にスゴイ!』の場合、1回の放送で何度も主人公のファッションが変わるのが「見せ場」のひとつだが、もうひとつ、主人公が怒りを爆発させて相手を打ち負かしてしまうこと。


第2話でも、合コンで一緒になった男の子が、

「Aではじまるイタリアの車なんて、君たち知らないだろうねぇ」

と新車を買ったことを自慢していることにカチンときて、たまたま校閲していた本で得たウンチクをマシンガンのように言い返した。

「それって、ドライバーのエンツォ・フェラーリに独立されて、F1でフェラーリに惨敗した揚げ句経営不振でフィアットに 買収されたにもかかわらず、イタリアを代表する上級車メーカーとして日本では依然として大人気のアルファ・ロメオのことですか?」


合コンはシラーっとしてしまったが、テレビを見ているこちら側は拍手喝采である。


もちろん、『……トルネード』でも悦子が相手を打ち負かす場面が登場するが、ネタバレになるので、どんなタンカを切ったかはナイショにさせていただく。(あとで、ちょっとだけ引用する)



さて、本題に戻って『……トルネード』の内容を簡単に紹介する。


担当する連載小説を校閲していて、悦子はひとつ気になることがあった。


ひと目見ればわかるような文字の重複や誤字・脱字がどの原稿にも1箇所ふくまれている。


連載第1回の原稿だとひとつ目のセンテンスのうしろ、2回目はふたつ目のセンテンスのうしろ。少しずつずれていく間違い文字をつなげてみると、連載7回分で次のような文になった。

「私は そこから 動けない 救助を ウェイティング その場所は 居住区の」


もしかして、この作者はどこかに監禁されていて、助けてほしいというメッセージを送ってきたのではないか?


そんなとき、好きなのに距離が縮まらないイケメンモデルから軽井沢旅行に誘われる。


2人きりの旅行と思ったのに、軽井沢に着いてみると同期入社の森尾や、悦子の大っきらいなボンクラ編集者の貝塚と顔をあわせてしまう。


せっかく東京から離れて二人きりになりたかった悦子だったが、なりゆきで校閲していた連載小説の作家の家にいくことになる。


作家の自宅で、気になるメッセージの正体に気づいてしまった悦子は、とうとう怒りを爆発させる。

「助かりたいなら自分でどうにかしなさいよ!」


メッセージの正体は何だったのか?
なぜ悦子がキレてしまったのか……



2つ目の事件は、突然の人事異動である。


ファッション誌『Lassy』編集部への異動を希望している悦子の希望が半分だけ聞き入れられ、結婚情報に特化した季刊雑誌『Lassy noces』への異動辞令がおりた。


やっと夢がかなったはずなのに、ファッションが大好き! ということと、ファッション誌編集の仕事の間には大きなギャップがあった。


好きでもない校閲部の仕事をしている頃にはストレスを感じなかったのに、新しい職場で悦子はストレスにつぶされそうになる。

今まではストレス要因があっても相手に言い返して打ち負かしてきた。主に貝塚や岩藤を相手に。何故ならあそこは自分がいるべき場所じゃなかったから。しかし今いる場所は悦子がずっと行きたいと望んできたところに限りなく近い。言い返して打ち負かして良い相手はひとりもいない。


自由きままに過ごしてきた悦子は、新しい職場でやっていけるのか……



最後の章では、同期の森尾が会社をやめて別の出版社に転職し、やっと恋人になったイケメンモデルも新しい目標に挑戦していく。


悦子も新しいステージをむかえていくのだろうか?


校閲ガール』第4弾が楽しみになる終わり方である。


巻末の「おまけマンガ」には、

その謎の答えは!? 次巻『受付ガール』!! Do'nt miss it !!


と書いてあった。


ホンマかいな!

参考書評


書名:校閲ガール
著者:宮木 あや子  出版社:KADOKAWA  2014年3月刊  \1,296(税込)  222P


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書名:校閲ガール ア・ラ・モード
著者:宮木 あや子  出版社:KADOKAWA  2015年12月刊  \1,404(税込)  230P


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