校閲ガール ア・ラ・モード


著者:宮木 あや子  出版社:KADOKAWA  2015年12月刊  \1,404(税込)  230P


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毎週火曜日夜10時からTBSで放送されている『重版出来』というドラマをご存じだろうか。


録画して毎週たのしみに見ていたところ、中3の娘も見ていたということが発覚し、我が家の視聴率が66%という人気番組だった。
残念ながら今夜で終わってしまう。


最終回はあとでゆっくり録画で見るとして(笑)、今日は、やはり出版界を舞台にして2014年に出版された『校閲ガール』の続編、『校閲ガール ア・ラ・モード』を取りあげる。


読んでいない人のために『校閲ガール』


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の内容を簡単に紹介する。


物語の主人公は、紀尾井町にある景凡社という出版社に勤める入社2年目の女性社員である。
小学校のころから景凡社の雑誌を読んで育ち、「ぜったい景凡社のファッション雑誌の編集者になる!」と決めて、難関を突破して就職を勝ち取った。


なのに、配属されたのは校閲部。
どうやら、彼女の名前が河野悦子(こうのえつこ)なので、「名前が校閲っぽい」というだけで配属先を決められてしまったらしい。


こんなはずじゃなかった、とふてくされた悦子だったが、気を取りなおして校閲に取りくむ。
そんな悦子のまわりで、つぎつぎと事件がおこる。ひとつ片付いたと思ったらまたひとつ、と事件がつづき、悦子の活躍で事件は解決していく。


――以上が『校閲ガール』の内容だ。


今回とりあげる『校閲ガール ア・ラ・モード』は、『校閲ガール』のシリーズ化をねらった2冊目。


前作と同じように悦子のまわりでつぎつぎと事件がおこる、と予想して読みはじめたら違っていた。
悦子を主人公にした物語ではなく、悦子のまわりの人々を中心にした群像劇だった。


悦子の会社のファッション誌編集者、校閲部の同僚、文芸編集者、大御所作家……。
それぞれ、自分の仕事のしかたや生き方にふと疑問を持ち、新しい仕事をめざしたり、新境地に達したりする過程が描かれている。


前作が事件中心で主人公の悦子がにぎやかに活躍していたのに対し、今回は仕事のしかたや生きがいがテーマになっていて、文芸評論家ふうに言えば「人間が描かれている」気がする。


どれだけ「人間が描かれている」かは実際に手にとって見ていただくとして、印象に残った箇所を2つだけ引用させてもらう。


一つ目は、「ファッション雑誌の編集者になる!」と決めている悦子がどれだけファッションに詳しいかを描いた場面。
トレンチコートを選ぶときの注意事項をまくし立てられた同僚の感想である。

「ガンフラップは絶対なきゃダメ。アンブレラヨークもあったほうがかっこいいし雨の日に便利、あと通勤鞄がショルダーバッグならエポレットのボタンが取れるかもしれないから気をつけて、インバーテッドプリーツのボタンは外したほうが可愛いからなるべく外しなさいよ」と言われたがすべてにおいて何のことだか判らない


いやぁ、すごい!
思わず、トレンチコートのパーツ解説をググってしまった。


ふたつ目は、理想的な文学論を展開する恋人「くうたん」への女性編集者の反論。

後世に残る文学を。そんなこと、いつだって考えてる。百年とか千年とかずっと読み継がれている名作が名作たる所以は誰でも理解できる。けれど私はくうたん曰くの「文学を金儲けの手段とする俗物」な出版社勤務の編集者で、俗物は文学を商品にして金儲けをしなければならない。そうしないと今生きている作家が飯を食えずに死ぬ。


そうだ、そうだ!
お高くとまった理想論者なんて大っきらいだ!


最後にもうひとつ。カバーの下の凝った印刷を、ぜひ手にとって確かめてもらいたい。
みんなが応援すれば、3冊目も出るかもしれないから、買ってあげてね〜。