とりあたまJAPAN 日はまた昇る!編


著者:西原理恵子佐藤優  出版社:新潮社  2012年3月刊  \1,155(税込)  141P


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何を言っても3歩で忘れてしまう、と自称する西原理恵子と、お堅い本ばかり書いてきた元外交官の佐藤優がコンビを組んで「週刊新潮」に連載を書いた。


同じテーマでそれぞれ1ページ書く、というシンプルな構成だが、西原が相変わらずの作風で飛ばしているのに刺激されたのか、文体だけはいつも通りお堅い佐藤優も、内容がずいぶんオチャラケているのが楽しい。


2009年から2010年の連載をまとめた『週刊とりあたまニュース 最強コンビ結成!編』につづく第二弾が、この『とりあたまJAPAN 日はまた昇る!編』。2010年9月から2011年末までの連載を収録している。


出版から1年が過ぎ、あと3ヵ月もすれば第三弾が出る今ごろになってこの本を取りあげたのは、ひとえに僕の仕事が忙しすぎるからだ。
本を読む時間はなんとかこじ開けるとしても、忙しすぎて、原稿を書く時間がなかなか作れない。


ご紹介が遅くなってしまったことを、まずはお詫びさせていただく。


……が、発刊して1年すぎてから読むと、発売直後に読んでも分からない味わいがあるのも事実だ。


たとえば、2011年の大予言。


当時はまだ民主党政権で、菅直人が首相だった。
佐藤優は、自民党民主党をこき下ろしたあと、「案外、民主党政権は安泰かもしれない」と予想し、「中国は尖閣諸島での挑発を繰り返す」と予言している。


過ぎ去ってしまった2011年がどういう年だったかを思い起こすと、けっこう当たっていることに気づく。


一方で、サイバラは、「ドル70円」「大阪倒産」「そろそろだと思う。北朝鮮ほうかい」など、予言をはずしまくっているなかで、

「なんか歌って踊ってるテアイの人が、数がふえまくる」という予想

だけは当たっていた。


もうひとつ、サイバラのマンガにDr.高須がしょっちゅう出てくる。
高須クリニック院長とサイバラの熱愛報道があったのは、この本が出たあとの2012年10月のことだが、これだけDr.高須が登場しているのを見ると、べつに隠しだてしていたわけではないことが分かる。


このほかにも、ホットな話題だったころから2年経ってみると、なんだか懐かしく感じる話題も多い。時事ネタであればあるほど。



毎週のお題は編集部で決めて2人に伝えるそうだ。
世の中で話題になっていたこととはいえ、コラムやマンガのネタになりやすいとは限らないはずだが、佐藤優は毎回、お題にそった原稿をきっちりしあげている。


かたやサイバラは、すなおにお題をテーマにしたりしない。
1コマめから、「ああまたさっぱりわからんちんのスポーツお題が」とか、「今回のお題は絶対カダフィ殺害だと思っていたのにー」とお題に文句つけるのは序の口。
あの高視聴率番組「家政婦のミタ」がお題になったとき、「今回くらいどうでもいいネタはないっ」、「一回も見たことない」と公言し、ドラマの内容にまったく触れずに終わっていた。


ネタに困った時は、岩井志麻子らしき怪女が出てきて、エロネタでぐちゃぐちゃにして終わることもある。


サイバラの場合、お題にそっていない方がおもしろいのだ。


おまけに、サイバラは不意打ちをしかけてくる。
少し長いが、「計画避難」というお題が出たときのサイバラの作品を引用させてもらう。

   国連職員に
   世界のあちこちの
   それはもう絶望的な
   難民の話を聞いた。


   あの山の
   向こうには
   たぶん
   もっとつらい事が
   待っている。


   でも人々は
   動いてゆく
   のだと
   言っていた。


   「それはなぜか?」
   と聞くと皆
   口をそろえて
   言う。


   「帰り
    たい」


   先祖の眠る
   田畑のある
   自分が
   生まれて
   育ったところへ


   ただ
   どうしても
   帰りたい
   のだと


   人が
   生きる
   ことは
   ながい
   ながい
   家路の
   ようだ。


   「お帰り
    なさい」の
   待つ家に
   人は必ず
   帰って
   くる。


   計画避難
   いつか
   必ず
   お帰り
   なさい。

ずるいぞ……。サイバラ