7つの動詞で自分を動かす


副題:言い訳しない人生の思考法
著者:石黒 謙吾  出版社:実業之日本社  2013年2月刊  \1,365(税込)  205P


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著者の石黒氏は落ち着きのない人である。


ベストセラー『盲導犬クイールの一生』のような、心にジーンとしみる本を出したかと思えば、
ベルギービールの多彩さを紹介する『ベルギービール大全』、
シベリア抑留体験を風化させまいとする『キャンバスに蘇るシベリアの命』、
ひたすらダジャレを追究した『ダジャレ ヌーヴォー』、
エンタテインメントと心理学を融合させた『カジュアル心理学』など、
硬軟取り混ぜた書籍を発刊しているし、
自著だけでなく、出版プロデューサー・編集者として、ジャンルの節操なく17年で170冊の本を作ってきた。


出版以外にも、草野球チームの現役選手として年間40試合をこなし、炎天下の甲子園で高校球児に毎年声援を送っているかと思うと、「全国キャンディーズ連盟代表」としても活動している。


じっとしていられない子どものように、あれもこれも、興味を持ったことに全力投球し、次々と本に仕上げてしまう御仁なのである。


そんな石黒氏の最新刊がこれ。
「思考法」について、石黒氏が熱く語っている「経験則と情緒が共存した考え方レッスン」本である。


この本の主題を、思いっきり要約すると、
  人生は、能動的に動いた方がストレスが少なくていいですよ。
  そのためには、「名詞で受動的に考える」のをやめて、「動詞で能動的
  に考える」ようにするといいですよ〜!
という主張が展開されている。


石黒氏自身の生き方が、極めてストレート、シンプル、かつソウルフルに語られている“生き方指南本”なのだ。


石黒氏が選んだ7つの動詞とは、


  ぶつける
  分ける
  開ける
  転ぶ
  結ぶ
  離す
  笑う


である。


7つの言葉を“単語”として眺めていても、ピンと来ないと思う。「なぜ、この7つなのか。なぜ、この順番なのか」と、尋ねてみたくなるかれしれないが、この質問は、「なぜ“モーゼの十戒”は10個なのか」を問うているのと同じ。


どちらも客観的に理解するものではく、まずは、一つひとつをよーく吟味して味わうことが大切なのだ。


例として、「ぶつける」を見てみよう。


なぜ「ぶつける」が大切なのか、を自身の経験を通して述べ、石黒氏は、なぜ「ぶつかる」ではないのか、「当てる」と考えてはいけないのかを論じる。
よく似たほかの言葉ではダメな理由を示したあと、さらに自分の経験の引き出しをあけて、次のような事例を教えてくれる。


石黒氏は著者であると同時に、出版プロデュースや編集も手掛けているので、会合や飲み会で初めて会った若手フリーライターと、本の企画で盛り上がることがある。
「いいね。その企画いけるかもよ」と石黒氏が興味を示す内容も多いのだが、企画内容をメールで送ると約束をした若手フリーライターは、そのまま何の連絡もしてこない、とのこと。


ライターの仕事は発注されてから書くことが多いとはいえ、請け負い仕事に慣れてしまって、仕事とは「もらうもの」という観念から抜け出せないのではないか、と石黒氏は嘆いている。


だから、「編集・ライター養成講座」で講義をするときに、受動で構えずに能動的に仕事を作っていくほうが楽しいよ、という意味を込めて、
  「仕事は来なくなってからが一人前」
と極論を言うことにしている。


自身が作る本も「編集者は面白がるけど、売れ線ではない、つまり万人ウケしない趣味的なカルチャー本、ニッチな本」が多い、という。


石黒氏の持ち込み企画だった『盲導犬クイールの一生』も、はじめは出版社10社に断られ、11社目でやっと採用されたものだ。その後も紆余曲折があり、6年かけてやっと出版したあとに残った金額を計算してみたら、なんと18万円だったそうだ。


そのままだと、時間をかけた割にちっとも儲からない仕事のひとつになってしまうところところだった。
ところが、誰も売れると予想しなかったのに、この本は87万部のベストセラーになった。


著者の思いがこもった本は予想外に売れることがあるのだ。


同じように、この『7つの動詞で自分を動かす』も、きっと“予想外”本に違いない! と、本人が言っていることをお伝えしておこう(笑)。


他の6つの言葉についても、自身の経験と実感だけを根拠にして、とにかく行動をおこすことを勧めてくれる。


石黒氏は自己啓発本やビジネス書が大嫌いなので、時に厳しく批判することもある。


たとえば、

「すぐ仕事に役立つハック、年収ン千万円の発想法、仕事ができる手帳術……。僕は開いたこともありませんし、嫌いです」


と言ってみたり、
「ウィン−ウィン」という言葉が嫌いだ、と宣言したあと、

「我欲の深い人同士が手を結んでいるような印象を受けるから。戦争で弱い国を叩きのめそう、オレが勝つからオマエも勝とうぜ。弱いやつはいらない、と大国が手を組んでいるイメージ」


と理由を述べている。


誰が誰にも勝たなくていいじゃないですか。僕なら「イーブン−イーブン」と言いたい、との提案には、思わず賛同してしまう。


こうして、7つの動詞について、熱くあつく語り終えたあと、石黒氏は、「何かが足りない」と感じた。


進むための7つの動詞が車のパーツだとすれば、運転手に相当する深い言葉がほしい。
7つの動詞の根っこになる言葉があるはず。


そんなとき、ふっと降りてきた言葉があった。
その言葉には、人間が太古から持っていた、楽しく生きたいという本能に向かえるヒントが詰まっていた。


石黒氏が「終章」でお披露目した言葉とは……。


あとは、読んでのお楽しみとさせていただこう。


読んでいるうちに動きたくなる!
きっとあなたも。