副題:頭の中にタンスの引き出しを作りましょう
著者:石黒謙吾 出版社:KADOKAWA 2015年10月刊 \1,706(税込) 239P
著者・編集者として石黒氏は200冊の本を世に送り出してきた。
コミカル系からシリアス系、ロジカル系からエモーショナル系まで、まるでダボハゼのように異なるジャンルに食いつき、書籍という形に消化、もとい、昇華している御仁である。
著者・編集者のほかにダジャリスト、全キャン連(全国キャンディーズ連盟)代表、ベルギービール評論家など多くの肩書きを持つ石黒氏だが、本書では「分類王」としての長年の経験をもとに分類することの大切さを訴えている。
石黒氏が「分類王」を名乗るきっかけになったのは、1998年に扶桑社から出版した『チャート式 試験に出ないニッポンのしくみ』である。
『チャート式……』は、マトリクス、円グラフ、棒グラフ、系図、地図などを使って、さまざまなものを分類・比較した本である。
傾向や割合、属性、分布などの分析手法は本格的なのだが、調査対象は入浴剤、ヒゲ、歌舞伎の隈取り、グラビアタレント、キャンディーズの曲の「コール」など。
『チャート式……』を出版してから、ひたすら役に立たない方向への分類をつづけてきた石黒氏は、時代の流れが追いついてきたことを感じたようだ。
分類をつづけること、分類を習慣化することで、自分の中にロジックができる。それが地アタマを良くし、仕事にも役立てることができる。
「分類」とは、即効性はなくても、ジワジワ効いてくる漢方薬のようなものなのだ!
それが本書の主題である。
そもそも分類とは何か。
「似て非なるものの違いや差について気づいて、分けること」と石黒氏は定義する。
こういうと難しいことのように感じるかもしれないが、人はなにか認識(インプット)すると同時に分類し、ほぼ瞬時に表現したり行動を起こしたり(アウトプット)している。
石黒氏は言う。
広い意味でとらえれば、私たちのあらゆる行動には分類がついて回ることがわかります。たとえば、買いものだって分類で成り立っている。ポテトサラダを買ってきてと言われて、スーパーの棚を見ると300円のポテトサラダが1種類だけ。ここで、たしか家の近くのコンビニに198円のポテトサラダがあったなと思い出す。夫婦2人ならこれで十分かなと思って、引き返してコンビニで買うという決断をした。
「買う」「買わない」という2つしかない選択肢ですが、実行に至るまでに、比較要素を俯瞰して分けているわけですから立派な分類。
そうですか。石黒さん、ポテトサラダを買ってきてと言われて、スーパーに行ったんですね、と石黒氏の日常生活が目に浮かぶ。
こんな身近な実例が、いたるところに登場する。
引越しの梱包作業、「明朝体」「ゴシック体」などの様々な文字フォント、女の人を食事に誘うときのお店えらび、アルファベット26文字の分類、膵臓がん発見検査方法の開発エピソード、14種類のダジャレ分類、エア片付けを使った分類訓練、パソコンのフォルダ、電車の中吊り広告、アドレス帳、オーケストラの楽器、ココイチのカレー、…………。
きりがないので、ここらでやめておこう。
石黒氏にとって息を吸うのと分類するのは同じようなものだから、分類の実例がつぎからつぎに沸いてくるのだ。
中にはメールフォルダの分類方法のように、役に立ってしまいそうなものも混じっているが、ひたすら役に立たない方向に分類しているものが多い。
こんなものまで分類しちゃうの!? と読者をおどろかすことで石黒氏が伝えたいことはただ一つ。
分類そのものを目的にすべし! ということだ。
ずん、ずん、ずんと少しずつおなかに響いてくる分類の事例は本書を手にとってご覧いただくとして、分類の心構えと効用についての石黒氏の名言をいくつか引用させてもらう。
- 決断の前に分類あり、分析の前に分類あり
- チャートで意識することによって思考がクリアになる
- ネットは活用しつつ、言いなりにはならない
- 究極のオリジナルは、分類の枠の外に
- あとから分けようとしない、分けることを仕事にしない
- インプット時に楽をしない
- 分類に目的を求めるな、エンジョイせよ
- 分類をしないと、人はだんだんバカになる?
- モノマネ上手は分類上手
- 相対と絶対の分類で、幸せを感じる
最後に、分類王の分類王たるひと言を。
(分類せずに)放置しておく気力が涌かない