著者:佐藤 伝 出版社:学研パブリッシング 2010年9月刊 \1,260(税込) 125P
「池上・茂木・勝間バブル」発言事件をご存知だろうか。
書店の店長が心に残った本を紹介するはずのWebページで、
茂木健一郎も勝間和代も急激に人気が上昇したあと、バブルが弾けた。
売れるからといって出版点数が増え、内容の質が落ちたせいだ。
いま書店界では、いつ「池上彰バブル」が弾けるかが話題になっている。
という趣旨の記事を書き、波紋を呼んだ事件だ。
(詳しくは、飯塚章氏のまとめ記事 ブックファースト店長から端を発した「池上・茂木・勝間バブル」発言の波紋 参照)
批判したくなるような本の書評は書かない、と僕は決めている。
本を売る側の書店が、公然と本をけなしちゃダメでしょ。出版社に文句を言いたいのなら、別の場所で言ってもらいたい、という僕の感想はさておき、売れてる著者に出版社が殺到してしまう現象は、確かに望ましくない。
書店も読者も辟易しているかもしれないが、なにより著者がかわいそう。編集者のリクエストにこたえようとして、原稿を山のように書いたあげく、「質が落ちた」とか「バブルだ」なんて言われてはたまらないはずだ。
本日紹介する『魔法の習慣』著者の佐藤伝氏もそうだった。
ちょうど3年前の8月末、僕の出版記念パーティに佐藤伝氏がゲスト出演してくれた。(以降、佐藤伝氏のことを「伝ちゃん」と呼ぶ)
ゲストの自己紹介を伝ちゃんにお願いしたところ、前年末に出した『幸福を呼びよせる朝の習慣』(僕の読書ノートはこちら)が2007年上半期ビジネス書ベストテン(トーハン調べ)に入ったこと、そのあと7件の出版企画が同時進行していることをサラッと紹介してくれた。
今週、3年ぶりにお会いしたとき、
「その後もたくさん発刊しているんですか」と尋ねたら、
「いや、今考えると、あの時は異常でした。今は、ちょうどいいペースで書いています」
との答えが返ってきた。
本の執筆がちょうどいいペースになったことで、きっと余裕ができたのだろう。
伝ちゃんの多方面の活動(創造学習研究所で教えること、講演会や伝説の朝食会で伝ちゃんファンに人生で大切な習慣術を伝えること、書籍を出版すること等)が有機的に結合しはじめた、という。
そんな伝ちゃんが、50歳を超えてたどり着いたのは、
人生でいちばん大切なことは、
「なんとなくイイ気分! で生きる」こと。
という境地だという。
ふつうの人は、「なんとなくイイ気分」よりも、「やったぞー!」声を出したくなるようなものすごく嬉しいことの方がスゴイように考えてしまうかもしれない。
でも、幸せの絶頂! なんて長続きしない。
それよりも、「なんとなくイイ気分」のほうが大切。「なんとなくイイ気分」を保つことで、自分も周囲もいい方向を向いてくる、と伝ちゃんは言っていた。
いや〜。いいこと聞いた。忘れないようにしよう! とメモっていたら、「なんとなくイイ気分」は、この本『魔法の習慣』のメインテーマということも教えてもらった。
どれどれ……。
さっそく探してみた。
あった!
この本に書いてある49個の習慣のうち、48番目に載っている。
ちょっとだけ引用させていただく。
私たちは、なぜいろいろな夢を叶えたいと思うのでしょう?
たとえば、なぜ、ハワイに別荘を持ちたいの?
それは、イイ気分になりたいからですよね。
「ハワイの別荘でくつろいだら気分が良さそー!」
こう思うからです。
ということは、普段からなんとなくイイ気分でいたら、その夢は叶ったと
同じということです。夢の先には、つねに「なんとなくイイ気分」という状
況が待っているのです。
「なんとなくイイ気分」なんて無理しなくてもできそうだけど、「つねに」というのはハードルが高い。
簡単そうでむつかしい。
だから習慣になることをめざして、今日から実践してみよう、と教えてくれる。
さすが、行動習慣マイスター。
習慣の達人は、背中を押すのもうまい。
たとえば、41番目の
「今日寝て」明日起きる
という習慣。
夜更かしはやめよう。日付が変わる前に寝よう、という呼びかけだ。
成長ホルモンや肌の状態など、夜更かしが悪いわけを理詰めで述べたあと、次のように読者と問答する。
「11時58分でもいいですか?」
いいですとも!
「12時3分ではダメですか?」
ダメです!
こんなにスパッと言われたら、今夜から実践できそう。
「習慣が変われば、人生が変わる!」
「人生は、一瞬の選択で決まる!」
帯の言葉を、あなたも信じてみてはどうだろう。