戦略系コンサルタントのロジカルシンキング・リーディング


著者:大石 哲之  出版社:ベストセラーズ  2009年9月刊  \1,365(税込)  221P


ロジカルシンキング・リーディング    購入する際は、こちらから


ビジネスブックマラソン」発行人の土井英司さんはビジネス書を何千冊読んでも飽きないそうですが、凡人はそうはいきません。


最近、私もビジネス書に手が伸びなくなってきました。


理由は分かっています。
いろんなビジネス書を読んで得た知識を仕事で使う場面が少ないからです。


ビジネス書には、よく「実践しないと読んでもムダ」と書いてありますが、使う機会のない知識が増えると、インプットばかりしていることに疲れてしまうのですよ。



折も折、著者の大石さんから直接ご連絡いただき、本書の献本を頂戴しました。
表題の「ロジカルシンキング」がいかにも「ビジネス書!」と主張しています。


ビジネス書は、しばらく読みたくない気分なんだけど……。


しかたなく本を開いてみると、「まえがき」に、まるで私のために言っているような言葉が書いてありました。

  本を読んでも身につかない。
  本を読んでもスキルがアップしない。
  本を読む習慣はできた。なのに、たくさん本を読んでいるにも関わらず、
  なかなか身にならない。仕事の成果に結びつかない。

  本書は、そのような悩みを抱えているビジネスマンのために、書きました。


おお! すばらしい。
何という「引き寄せ」でしょうか。


気を取りなおし、あっという間に最後まで読みおわったのは言うまでもありません。


著者の大石さんは、なるべく早くビジネス経験を積みたいと思い、外資コンサルタントに入社しました。(そういえば、『いいことが起こり続ける数字の習慣』著者の望月実さんも同じような入社動機を書いていましたね)


短期間で成果を上げることを求められるコンサルタントの仕事を通じて、大石さんは、次のような読書法を身につけました。

  • 1冊の本からは多くを学ばない
  • 問題点を明確にすることから成果につなげる
  • 1冊の本の9割はムダ
  • 「同じ分野の本を」「10冊買って」「集中して読む」
  • 「トピック本」で全体を俯瞰する
  • 全部読まずに必要なところだけをゆっくり読む
  • 同じ本は2度読まない
  • 読書した内容をどのように実践につなげるか
  • 読みおわった本は読んだ時系列で整理する。


詳しい内容は本書をお読みいただくとして、皆さんも「1ページ目から積み上げるように」読んだりせずに、目的に沿った部分だけお読みください。
くれぐれも、全部読もうとせずに、目的以外の部分は捨ててしまうように本書をお読みくださいね。


――なんだか、読むことを勧めているようで勧めていないような……(笑)。


でも、それが大石さんの指導にかなう読み方なのですから、仕方ありません。



ここまでの本の内容紹介を読んで違和感を感じた方には、ふつうの読書と大石さんのいう「リーディング」は別ものであることをお伝えしましょう。
この本は「教養や人生のための読書を否定するわけではありません」と、大石さんも言っている通り、同じ「読書」でもいろんな読書のしかたがありますから。


また、「仕事のための読書」と割り切ったとしても違和感を感じる、という方もおられるかもしれません。


実は、私もその一人です。


私は計算機屋ですので、仕事のために読む本はコンピュータ関係の本が中心です。
もちろん一部をピックアップするように読むこともありますが、どちらかというと精読することの方が多い。『sed&awkプログラミング』などは、隅から隅まで、しかも何回も読み返しました。


大石さんの「リーディング」方法とずいぶん違っているのは、やはりコンピュータは1文字でも間違えると動いてくれないからだと思います。


コンサルタントが調査分析をするとき、「Quick & Dirty」といって、精度はそこそこでよいので素早くやることを目指すそうです。
かたや計算機屋の仕事のしかたは、典型的な「Slow & Beauty」です。


仕事のしかたには、いろんなやり方がある。
読書のしかたも、目的によっていろんな方法がある。


それが本書を読んだ「私の」収穫でした。


「完璧を求めずに、常にアウトプットを優先させる」という仕事をしている方には、きっと大いに役立つ内容と思いますよ。