フォーカス・リーディング


副題:1冊10分のスピードで、10倍の成果を出す「いいとこどり」読書術
著者:寺田 昌嗣  出版社:PHP研究所  2008年8月刊  \1,155(税込)  238P


フォーカス・リーディング 「1冊10分」のスピードで、10倍の効果を出す いいとこどり読書術    購入する際は、こちらから


10年くらい前に、速読術を試したことがあります。短時間でたくさんの本読むことにあこがれたからです。
2週間くらい一生懸命に練習しましたが、ダメでした。速読術の本に書いてあるとおり、眼球の動きを早くして読み取ろうとするのですが、ちっとも内容が頭に入ってきません。


世の中に本を読むのが速いと自慢している人がたくさんいるけど、内容が分かっていないに違いない。
そうに決まってる!
イソップの「すっぱいぶどう」よろしく、それから速読術が嫌いになりました。


あれから10年。副題の「いいとこどり」に惹かれて、久しぶりに速読本に手を伸ばしてみたのが今日の一冊です。


著者の寺田さんも、高校生のときに速読にあこがれます。「1冊1分」というキャッチコピーに惹かれ、「これで人生変わるぞ」と本気で信じて始めたのです。
鍛えても鍛えても、「1冊1分」なんていう世界に到達できませんでしたが、4つの教材や教室に通うことによって、1ページ6秒までスピードを上げられるようになりました。
7年かけた成果を「これこそが、本当に誰にでもできる速読術」と公開してみたところ、多くの支持を集めます。会社を辞めて速読教室を始めたのが2001年のことでした。


寺田さんの速読術の特長は、単に速く読むことを目標とするのではなく、「何のために読むのか」「何を読み取るのか」という目的に焦点を当てていることです。
目的に徹底的に焦点を当てた(フォーカスした)読書法をマスターすれば1冊を10分で読むことが可能になる。これが、本書のメインテーマである「フォーカス・リーディング」です。


さっそく私も、本書を何のために読むのか、という問題にフォーカスして読み進みました。


私が「読書術」を読むのは、他の人がどんな読書の仕方をしているのかを知り、自分の参考になることを探すことが目的です。
寺田さんは、いったいどんな読書観を持っているのでしょう。


最初に目に飛び込んできたのは、次のようなショッキングな言葉です。

読書をすればするほど、自分の頭で考えなくなる

しかも、

これは、たくさん本を読む人にとくにありがちな現象です

と追い打ちをかけています。


ガーーーーン!!   (←ちと古い(笑))


速読本のくせに、たくさん本を読んではいけないと言っているの?


もうひとつ、本を読んで元気になったと喜んでいる人に対して、

その元気とやらの賞味期限は何日なのか、年に何回元気をもらえば
前に進めるのか、そこをもう一度考えてみてください

と突き放していました。


なんというスパルタ式読書教育でしょう。うかうか近づいては、ケガしそうですよ。


やっぱり多読はいけないのか……。
読者に一度思い知らせたあと、本書の真髄がはじまります。


このスパルタ式についていけそうな人にだけお勧めします。


寺田さんのノウハウをバラしてはいけないので、「理論編」の内容を一つだけ紹介すると、寺田さんは、本の内容をすぐに仕事に生かす「狩猟採集型読書」と、長期的にビジネス力を高める「農耕型読書」を区別しなければならない、と指導していました。


どちらにしても、ビジネス的な「リターン」を前提にしていて、私のように「ココロにしみる」本を探している人間と議論が合わないかもしれませんが、とても思考を刺激されました。


自分にとってのフォーカスとは何か。
読書がもたらす私のリターンとは何なのか。
少し考えてみましょう。


まず、私が本を読む目的は、ビジネスに活かすためではありません。本業のIT関係の本はあまり読まない(オイオイ)し、読んだとしても、やれビル・ゲイツがどうした、スティーブ・ジョブズの交渉術がどうしたと言われても、仕事に活用する場面は、まず考えられません。
本業に活かす機会がないという意味では、私の読書は100%趣味の読書と言えるでしょう。


ところが、物好きにも書評メルマガ・ブログで、他の人に本を勧めるようになってから、趣味100%とも言えなくなってきました。
本を読んだあと書評にまとめるという「アウトプット」が、どんな本を読むかという「インプット」を規定するようになってきたのです。


以前にも書いたように、私の書評のモットーは、本の内容をけなさない、著者の悪口を書かない、どうせ書くなら良いところを褒める、です。


よく、「あ〜、こんな本、読むんじゃなかった」と本の悪口を平気で書いているブログを見かけますが、こういう文章を読むと、不快感がこちらにも伝わってくるようで、気持ちのいいものではありません。


きっと、「せっかく買ったのだから」「もったいないから」と、最後まで読んだりするから、文句をいいたくなってしまうのです。


私は、こういう書評を書きたくありません。そのためには、途中で「おもしろくない」とか、「褒める要素が少ない」と気づいたときは、その場で読むのをやめることにしています。
また、最後まで読む本も、褒めたくなるような内容を探して、時には精読し、時には斜め読みしています。すっかり「狩猟採集型読書」になっています。


かと思えば、先日紹介した鎌田實先生の『雪とパイナップル』とか、江上剛さんの『隠蔽指令』のように、ゆったりした気持ちで「農耕型読書」した本は、それはそれで強くお勧めしたくなるものです。


あれもこれも勧めたくなってしまうので、皆さんは私のオススメに簡単に乗らないようにしてください(笑)。


あくまで、自分にとって相応しい内容かどうか考えてから本を選ぶ。
それが「フォーカス・リーディング」の第一歩のようですよ。