本の読み方


副題:スロー・リーディングの実践
著者:平野 啓一郎  出版社:PHP研究所  2006年9月刊  \756(税込)  225P


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おとといのブログで取り上げた『レバレッジ・リーディング』に、次のような一節があった。

まずは週一冊程度を目標に、気軽にできる範囲から本を読む習慣をつけてください。多読はどんな人にでも必ずできます。どうかこの本を参考にして、投資としての多読術を身につけてほしいと思います。


ビジネスで成功するため、という本田氏の読書目的に反発した私は、「こういう著者に“多読”と言われると、かえって“精読”にこだわりたくなってくるなあ」と感じた。(週に3〜4冊ペースの私は、本田氏のいう“多読”ではあるが)
ふと思い出したのが、“スロー・リーディング”という言葉。作家の平野啓一郎氏が提唱した本の読み方の名前だ。半年以上前に読んだ本だが、ちょっと蔵出ししてみよう。


本書の主題は、「せっかく本を読むなら、“精読”せよ」ということ。
平野氏は、「速読とは、『明日のための読書』である」と、太字で定義している。直近の仕事や会議のために大量の資料を読みこなし、新聞を斜め読みするのと同類の読書である。
かたや、スロー・リーディングは、『5年後、10年後のための読書』である」と、これも太字で宣言。すぐに役立つものではないが、人間的な厚み、本当の教養が身に付く読み方だ。
本の読み方をこう定義した段階で、もうどちらを平野氏が勧めているか明白である。


平野氏は、単に「じっくり読め」といっているわけではない。
油断していると、自分にとって馴染みのある言葉や、自分が普段から関心を持っている言葉を拾って読んでしまいがちなのが読書というもの。せっかく本を読んでも、これでは「今までの自分」という殻から一歩も外に出られない、と平野氏は戒める。
曰く、

自分と異なる意見に耳を傾け、自分の考えをより柔軟にする。そのためには、
一方で自由な「誤読」を楽しみつつ、他方で「作者の意図」を考える
という作業を、同時に行なわなければならない。
これは、スロー・リーディングの極意とも言えるだろう。
                  (太字は原文のまま)


他に、「人に説明することを前提に読む」、「書き手の視点で読む」、「常に『なぜ?』という疑問を持ちながら読む」、「適度な熟成期間をおいてから、もう一度その本を手に取ってみる」など、読書を深めるための具体的方法を指南してくれる。


私が唸ってしまったのは、「読書で大切なことは、自分の感想を過信しないという態度だ」という一節。
私は、本を読んで抱いた“自分の感想”をとても大切にしている。だからこそ書評ブログなど書いているのだ。
それを、「過信してはいけない」と言われるとは……。


「今までの自分」という殻から外に出ろ! ということなんだなあ。きっと。