世界はカーブ化している


副題:グローバル金融はなぜ破綻したか
著者:デビッド・スミック/著 田村源二/訳
出版社:徳間書店  2009年5月刊  \1,890(税込)  351P


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アメリカの住宅バブルが弾け、昨年のリーマンショックの影響が世界を駆けめぐっています。


人類は何度もバブル経済を経験しているのに、どうして繰り返してしまうのでしょう。
人間社会は良くなっているのですか、逆にどんどん悪くなっているのですか?


経済は誰もコントロールできないものなのですか。
それとも、何か良い解決方法はあるのでしょうか。


簡単には答えが出そうもない問題ですが、大きな“問い”を持って思索しながら本を読むのも読書の楽しみのひとつです。
今回取りあげる『世界はカーブ化している』は、この質問にひとつの答えを提供してくれる一書でした。


著者のスミック氏の答えは、本の題名に表れています。


本書の原題『The World Is Curved』は、フリードマンの書いたベストセラー『フラット化する世界』(原題『The World Is Flat』)をもじったもので、「世界はフラットではない。危険なほどカーブして先が見えない」というスミック氏の結論を端的に示したものなのです。


先が見えない理由は簡単です。
市場と金融が国境を越えてグローバル化すると、国家予算をはるかに上まわる資金が世界中を動き回るようになり、誰もコントロールできなくなるからです。


何かのきっかけでお金の流れが少し変わってしまうと、勢いがついて誰も止められない。しかも、何がきっかけになるか、誰も予想できない。


それがグローバル金融市場の姿だとスミック氏は教えてくれます。


結論だけだと簡単そうに聞こえますが、この結論に到るさまざまな経済現象の説明は、かなり専門的な用語が飛び交います。なるべく書店で手にとって、読みこなせるかどうか確認してから買ったほうがいいでしょう。


私も、決して本書の内容をよく理解したとは言えませんが、経済にとって「信用」が最も大切であること、「信用」を生み出すのが政治指導者や各国の中央銀行の役割であること、にもかかわらず責任ある立場の人々が判断を間違う可能性も高いこと、等が分かりました。


日本の「失われた10年」がどれほどひどい失敗の連続だったのかを知って呆れてしまいましたし、日本ではあまり知られていない1992年のポンド危機の経緯を学び、金融の嵐の恐ろしさに身震いしました。


そして、本書を読みおわるときに、もうひとつゾクッとしたことがあります。


本文の最後は、次のように結ばれています。

  さすがに第二の〈大恐慌〉が起こる可能性はあまりなさそうだが、それが
  起こりうるという考えを馬鹿ばかしいと一蹴することも、もはやできない。
  世界はいま、まさに危険なほどカーブ化しているのである。


本書の原著が昨年9月に米国で出版された直後、リーマンショックによって第二の〈大恐慌〉が起こりかけました。
これほどグローバル金融の危険性を指摘するスミック氏でも第二の〈大恐慌〉が起こる可能性は低いと考えていました。


グローバル金融のゆくえは誰にも読めないのです。
たとえスミック氏でも。