副題:今、世界に何が起こっているのか?
著者:三橋貴明/著 渡邉哲也/監修
出版社:彩図社 2008年9月刊 \1,600(税込) 269P
サブプライムローン問題がどれほど深刻な経済問題かを分かりやすく説明してくれる優れた解説書である。
金融工学を駆使したサブプライムローンのしくみを理解しようとすると、ふだん目にしない様々なアメリカの組織名や金融商品名の解説を読まなければならない。RMBS、CDS、CDO、デリバティブ、リスクヘッジ、フェイクマネー、……。
説明している著者も「何を隠そう、筆者も同じようにウンザリしている」と告白しているほどだ。
この略号の連続の向こうに見えてくる事態を一言で要約するとすれば、「モラル・ハザード」が最も当てはまるように思う。
低所得者に言葉たくみに危ないローンを組ませたローン会社も、一種の偽装に荷担した格付け会社も、客から預かった資金をろくな審査もせずに投資したファンドも。関係者が揃いもそろって常軌を逸した行動に走った、その結果が全世界に飛び火した金融危機だ。
しかも、この金融危機はまだ終わっていない。
CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場の危機について書かれた一文を引用する。
「毒舌でならした」と自称する筆者も、言葉を濁すくらい恐ろしい「崩壊」がこれから始まるというのである。
本書を書店で買ったのは9月1日だったが、奥書には奇しくも「2008年9月16日初版1刷発行」と書いてある。
発行日に読了するというちょっとした偶然はさておき、もうひとつ、本書の解説の正しさを思い知らされた“偶然”に遭遇した。
今日9月16日は新聞休刊日だったのだが、新聞が発行されていたら間違いなく一面を飾った事件を朝のニュース番組で報じていた。
米証券4位のリーマン・ブラザーズ経営破綻
負債総額64兆円というのは、まさに国家予算規模である。
驚き覚めやらぬまま、会社へ向かう電車の中で本書の続きを読んでいた私は、178ページの「コラム3」を見て鳥肌が立った。
「ベア・スターンズに続くのはどこだ?」と題したコラムには、「リーマン・ブラザーズ証券が最も危ないと考えられている」と書いているではないか。
本書の他の予言も当たっているとしたら、「ドル崩壊!」という題名が人目を引くだけの誇大表現でないとしたら……。