著者:野口嘉則 出版社:サンマーク出版 2008年11月刊 \1,680(税込) 223P
ベストセラー『鏡の法則』、『3つの真実』著者の野口さんの新刊です。
『鏡の法則』や『3つの真実』は、人生にとって大切なことを物語形式で伝えていましたが、本書では、野口さんが幸せな人生を実現するために心すべきことを、直接読者に問いかけています。
野口さんの本のように、人生の意味をといかける内容の本を読むときは、ゆっくりと読むべきだと感じています。
本書の第一章に野口さん自身の読書法が書いてありますが、本書の読み方にぴったり当てはまる内容でしたので、先に引用させていただきます。
まず、急がずにじっくり読むことが大切です。情報や知識を得るた
めの読書であれば、なるべく短時間で効率のよい読み方をするのが
いいと思いますが、人間性を高める読書では、効率をあまり考えず
に、「自分の感性でじっくり感じ取る」ということを重視します。
「この本にはこのようなことが書いてあった」という知的な理解よ
りも、「この本を読んで自分はどう感じたか」という感性的な体験
(感動)が大切なのです。人間は感動によって変わるからです。
本書には、心の目で何を見ればよいのか、心の置きどころをどこにもってくればいいのかについて、野口さんの考えが諄々と語られています。
たとえば、過去のできごとに囚われて苦しんでいる人に対して、野口さんは誰かを責めたり許さないと思っていると、自分も過去のできごとから解放されなくなる、と指摘します。
誰かを責めるのをやめる、ゆるしてあげるという勇気ある行為が、結果的に自分もゆるしたことになるのです。
そういわれても、分かってはいても、どうしてもゆるせない。
そんな読者に対して、野口さんは、
「そんなときは、決して自分を責めないでください。
ゆるせない自分をゆるしてください」
と語りかけます。
かたくなになっている自分、分かっていてどうしようもない自分を責めないことで、いつか相手をゆるせるときもやってくる。
なんと深い思いやり。なんと深い人間性への信頼でしょうか。
また、心に何年も傷をのこすような根の深い問題でなくても、日常の人間関係でも「ゆるし」は大切です。
人と接するとき、「この人は間違っている」と相手を責めながら接するのと、「この人の言うことは共感できる。信用できる」と接するのでは、築かれる人間関係の質も大きく変わってしまいます。
もうひとつ、自分と接するときも「ゆるし」は重要です。
自分の性格のマイナス側面を好きになれない人が、その性格を好きになろうとしても無理があります。
いくらプラス思考が重要だといっても、「この厭な性格が本当はすばらしいのだ」と心の中で唱えたりすると、かえって自分で嘘を感じてしまいます。
こんなとき、まずはありのままの自分を認めて、そっくりそのまま抱きしめればいいのです。
生きることがつらい、苦しいと感じている人は、きっと意識のフォーカスがずれているのでしょう。
本書には「心の視力を高めるCD」という約40分の付録がついています。
6つのトラックには、それぞれ、
「リラクゼーション」
「内面と対話するワーク」
「感謝のワーク」
「セルフイメージを高めるワーク」
「人生というゲームに臨む」
「野口嘉則からのメッセージ」
という名前がついています。
ギターやピアノを定期的にチューニングするように、自分の心の状態を定期的にチェックして整えるために使うことを野口さんが勧めています。
リラックスしたいとき、感謝の気持ちが薄れてきたとき、やる気や自信が落ちてきたときに聞くのもいいかもしれません。
毎日気ぜわしく過ごしている人にとって、野口さんの問いかけは、深く、重く感じるかもしれません。
最終章には、次のような大きな問いが残されていました。
あなたは、あなたの人生を通じて、未来に何を遺したいですか?
芸術家であれば、すぐれた芸術作品を遺せるでしょうし、事業家であれば会社を遺せます。建築・土木にたずさわっている人なら、「地図に残る」ような橋や建物を遺せるでしょう。
じゃ、芸術家でもなく、大きな仕事をしたわけでもない人の人生は、何も遺せないのでしょうか。
野口さんが参考としている3つの例は、心にスーッと入ってくるものでした。
そうか、野口さんはこんなふうに考えて人生を送っているんだ。だからやさしく包んでくれる語り口調で、大切なことをおしえてくれるんだ。
ゆっくりと、ココロで読んでみてください。