プロは逆境でこそ笑う


副題:成功への糸口が見つかる思考法
著者:西田文郎 喜多川泰 出路雅明 植松努 清水克衛/総責任編集
出版社:総合法令出版  2009年5月刊  \1,470(税込)  295P


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5月の連休中に、おかしな本を読みました。


柔道部の先輩に「うちのマンションの1階に空き店舗があるから、お前なんかやれ!」といわれ、あまり交通の便のよくないところに本屋さんを開業した人の書いた本です。


タイトルは『繁盛したければ、一等地を借りるな!』。


もう開き直っているとしか思えません。


でも、この店には熱烈なファンがいて、北海道や沖縄、遠くはニューヨークからも来客するといいます。


よし、このアホ店長に会いにいこう! と決め、連休を利用して行ってきました。(詳しくは私の5月1日のブログ (『繁盛したければ、一等地を借りるな!』の紹介)、5月4日のブログ(お店の探訪記)をご覧ください)


本日の1冊は、このアホ店長こと清水克衛さんの責任編集で、清水さんを含めて全部で5人の著者が困難を乗り越える方法を語ってくれる一書です。


つらい状況に置かれてしまい、藁にもすがる思いでこの本を手にする人もいることでしょう。


ああ、つらい……。まるで地獄の日々だ。
自分を悲劇のヒロインのように感じている人に西田さんがアドバイスするのは、
  「苦楽力を身につけなさい」
ということです。


「苦楽力」は西田さんの造語で、一代で大成功する人が共通して持っていた能力――逆境や苦しい環境に置かれても、苦しみを苦しみと感じず、逆にワクワクと楽しんでしまう能力を指します。


たとえばエジソンは、もうこれ以上アイデアが出ない状況になったとき、「いよいよこれからだ!」とワクワクしてしまう変な脳をしていたそうです。成功者は精神力や忍耐力でものごとを成し遂げたのではなく、成功を信じる力が人より多かったから。
「精神力」ではなく成功を信じる力――「成信力」の持ち主だったのです。


そうは言ってもねぇ……、と考えてしまう人に、今度は出路さんが「逆境から逃げてしまった体験」を語ってくれました。


逃げてしまっても悪い状況は変わりません。相変わらずつらい現実と向かい合わなければならなかったとき、自分の身勝手さ、わがままさ、傲慢さなどあらゆる自分の愚かさを思い知りました。


「逆境とは乗り越えることができなくても、そのつらさを味わうことができるだけでも充分なのかもしれませんね」と出路さんは述懐しています。


立地が悪いという“逆境”を克服して書店を繁盛させている清水さんのほか、みなさん厳しい状況を乗り越えて前に進んでおられます。


私が一番びっくりしたのは、5人目に登場する植松努さんでした。
植松さんは炭坑が閉山してさびれる一方の北海道赤平市で植松電機という会社を経営しています。リサイクル用の機械を開発するという本業のかたわら、なんとロケット開発を行っていて、打ち上げ試験を行ったり、北海道大学アメリカ民間宇宙開発企業との協同事業などを手がけているそうです。

閉山という右肩下がりの環境を経験していますので、百年に一度の不況にもあわてません。


百年に一度の不況なのだから、同じことを経験した現役経営者はいない。この不景気という逆境は、自由な発想で成功できる最大のチャンスだ、と植松さんは言います。


今の不景気の原因は自信喪失にある。「どうせ無理」という言葉をやめ、「だったらこうしてみたら」と提案し続ければ、必ず社会は変わる。
小学校時代の悲しい経験から説き起こす植松さんの励ましは、まっすぐに心の中に入ってきました。


5人に共通するのは、常識の枠にとらわれない発想と行動をとっていること。いい意味で、アホなのです。


清水さんは20代のころ、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』に感動のあまり、桂浜に行ったことがあります。日本酒片手に一日中座り込んだそうですが、この話、どっかで聞いたことあるような……?


そうだ! 『鏡の法則』著者の野口嘉則も大学4年のとき、桂浜で竜馬の銅像相手にワンカップ大関を酌み交わしたって言ってました。


アホになれることは、きっと何かを成しとげる素養を示しているのでしょう。


「誰もやったことないけど、ちょっとやってみようか」
本書に流れる「ワクワク主義」と「アホ精神」が、あなたの背中を押してくれることでしょう。