DVDブック いつだって、うまくいく!


副題:『鏡の法則』と『心眼力』の秘密
著者:野口 嘉則  出版社:サンマーク出版  2009年4月刊  \2,940(税込)  95P


いつだって、うまくいく! ~『鏡の法則』と『心眼力』の秘密~ (DVDブック)    購入する際は、こちらから


ベストセラー『鏡の法則』著者の野口さんの最初で最後の講演録です。


ベストセラーも100万部を突破すれば一種の社会現象になりますので、本と同時に著者もマスコミに登場するものです。


たとえば、『東京タワー』のリリー・フランキー
ホームレス中学生』の田村裕、
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の山田真哉
少し前では『バカの壁』の養老孟司


しかし、『鏡の法則』が100万部を越えても野口さんはテレビ出演はしませんし、顔写真も公開しませんでした。私が見かけた限りでは、和田裕美さんのブログの和田ブログだけの「野口嘉則さん3つの身体(部位)の真実」というエントリにちょっと登場するだけです。(ほんとに、“ちょっと”なんです(笑))


そんな野口さんがサンマーク出版主催の「生命の輝き発見セミナー」の講師を依頼されたとき、「わかりました。喜んでお受けします」と即答したといいます。
なぜ引き受けたか今もわからない、と野口さん自身が言うほど不思議な成りゆきでこの講演会は実現することになりました。


もちろん、700席以上用意したチケットは1週間で完売。セミナー当日は満員御礼の大盛況だったそうです。


これがひょっとすると最後の講演かもしれない、と思った野口さんは、自分の子どもたちが大きくなった時のプレゼント用にビデオ撮影してもらうことにしました。あくまで個人的な記録用ビデオは、編集者の強い後押しで発売されることになります。


決め手になったのは、当日のアンケートに記されていた多くの参加者の感想です。多くの人が勇気と希望を得たことを知り、野口さんも腹をくくったといいます。


本書は、約1時間40分の映像が収められたDVDと、講演内容を書き起こした約90ページの小冊子がセットになっています。


例によって、私の読書ノートは内容紹介、ネタバラシは少なめでお送りしますが、アマゾンには次のような講演内容の項目が公表されていました。

  ◎高校時代の僕を襲った対人恐怖症
  ◎人生を変えた「本」との出会い
  ◎「行動すること」と「あるがまま」
  ◎乗り越えられない問題はやってこない
  ◎人生とは成長を楽しむゲーム
  ◎「人生を信頼する」とは?
  ◎心の目で見ることの驚くべき影響力
  ◎『鏡の法則』の真髄
  ◎心眼力が開けた栄子
  ◎人生には二つの生き方がある
  ◎僕たちは一人ぼっちじゃない
  ◎あなたは人生から愛されている ほか


私は、まず小冊子を読み、あとでDVDを見たのですが、「小冊子を読まなければ良かった」と後悔しました。


「読んでから見るか、見てから読むか」という30年以上前のキャッチコピーは、映画と原作小説は違う作品であることを示唆していますが、講演内容を忠実に書き起こした小冊子でも、講演映像とは別物であることを思い知らされました。


この講演のメインテーマである、人生の捉え方、人生を変えるための考え方は、聞く人の心情に訴え、心の中にしみてこなければ意味がありません。
小冊子の文字を追うと、野口さんの言うことが理解できたような気がするのですが、やはり理性や理論で分かった気になっただけのことです。もっと心情の奥深くに染みこませて納得するためには、せっかくの映像を活用しない手はありません。


ですので、本書に限ってはDVDを先に見てあとで小冊子の文字を追って追体験することをお勧めします。


この講演の冒頭で野口さんが明かしているのは、自身が体験したの対人恐怖症の苦しさと、どうやって乗り越えたかという重い経験です。
「対人恐怖症」という言葉も知らなかった高校時代の野口さんにとって、毎朝の通学と昼休みの過ごし方は苦痛以外の何ものでもありませんでした。
朝、友人と出会って普通に挨拶をすることに不安を覚える野口さんは、自分の視野にクラスメートが入ってくると、出会わないようにルートを変えました。同じように、昼休みの野口さんは、友人と普通に雑談しなくても良いように、トイレで時間つぶしをしたりしていたといいます。


この不安感のつらさは、突きつめてみれば経験した人にしか分かりません。しかし、ある程度、想像力で察することはできます。小冊子で文字で読んだときよりも、講演をDVDで見たときの方が、つらさの心情が伝わってくるのは間違いありません。


野口さんのかつて苦しさが伝わってきて、私も、心の通じる友人がいないことに悩んだ若き日の苦しみを思いだしました。


大学時代のことです。
にぎやかな学生寮を出て一人ぐらしをはじめた時、あれほど毎日顔を合わせていた友人たちが、誰も訪れてくれなくなりました。
そういえば、高校時代の友人と会う機会もありません。これから新しい友人ができても、住所がちょっと変わっただけで、また疎遠になるに違いありません。寂しさのあまり、私は「真の友人がいない」という考えに囚われてしまいました。
本を読んでいても、学生運動の末に自殺した高野悦子二十歳の原点』や、奥浩平『青春の墓標』など、孤独な主人公ばかりが目につきます。


私がこの苦しみから抜け出した経緯は長くなりますので省略しますが、野口さんが対人恐怖症を克服した方法は、具体的に講演で紹介していました。


やはり、心の問題は、心の思いを言葉でぶつけてもらわなければ、こちらの心に届きません。
野口さんの語りかけ映像を真正面から受け止めることで、伝説の講演会に連なる幸せを経験してみてください。