著者:鎌田 實 出版社:集英社 2004年6月刊 \1,575(税込) 103P
私の大好きな鎌田先生が4年前に出した「大人が読む絵本」です。
チェルノブイリ原発が爆発事故を起こしたあと、ベラルーシという国に放射能汚染が広がりました。
鎌田先生は、長野県の病院の院長を務めながら、日本チェルノブイリ連帯基金という国際医療ボランティアの会をつくって、現地の子どもの命を支える支援を1991年にはじめました。
本書に綴られる物語は、白血病で14歳で亡くなったアンドレイという少年の闘病時のエピソードです。
抗がん剤だけでは効かない難治性白血病のアンドレイを治療するため、ベラルーシではやったことのない治療が試みられます。
2千万円もする無菌室を日本から送り、手術が行われました。
アンドレイは何度も危機的状況に陥りますが、そのたびに奇跡的な回復を果たします。日本から緊急で送った薬が、何人もの航空関係者のおかげで間に合ったこともありました。
しかし、少しずつ抵抗力は失われ、とうとう少年は亡くなってしまいます。
しばらくして、鎌田先生は少年の母を訪ねることを決意します。
悲しみがあれば、その悲しみを聞いてあげたい。
グチでも恨みでもいいから、会って声をかけてあげたい。
でも、もしかすると歓迎されないかもしれない。
そう心配する鎌田先生に、少年のお母さんは、できることはすべてやってくれた日本の医師への感謝の気持ちを口にしました。
そして、もう一人。日本から派遣された「ヤヨイ」という若い看護師への感謝の思いも。
少年のお母さんが語る「感謝」とは何なのか……。
読み方によっては、さあ、泣いてください! という、押しつけがましさを感じるかもしれません。
少し前にも書きましたが、私は「泣ける映画」や「泣かせる物語」が嫌いです。
でも、この本はお勧めします。
だって、大好きな鎌田先生の本だから。
それに、先に私が泣いてしまったから。