いけちゃんとぼく


著者:西原 理恵子  出版社:角川書店  2006年8月刊  \1,155(税込)


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日経ビジネスという雑誌のポッドキャスティング番組「編集長のここだけの話」を毎週楽しみに聞いている。
昨年、編集長の佐藤吉哉さんが『いけちゃんとぼく』良かったよ、と紹介し、翌週、薬師神キャスターも「良かった」と感想を述べていた。


ただし、薬師神キャスターの言うには、「泣ける! という前評判をたくさん耳にしましたが、いわゆる“泣ける”本ではありません。泣けることを期待して読むと、がっかりするかもしれません」とのことだ。ともかく、よく売れているらしい。


ということで、「泣ける!」という感想と、「期待するとがっかりする」という感想を両方耳にしたあと、この「西原理恵子、はじめての絵本!」を手にした。
「絵本」というからには、見開き2ページに大きな絵が1枚描いてありそうなものだが、この本を開くと、しっかりコマ割りしていて、どう見てもマンガだよなー。


6歳の娘に、「ねー、声だして読んで!」とリクエストされ、ひさしぶりに絵本を読んであげた。娘はケラケラ笑いながら聞いている。特に、ふしぎな生き物いけちゃんが分身するところや、「ぼく」が怖くて夜トイレに行けない場面で笑いがとまらない。
「もっと、もっと」とせかされているうちに、20分ほどで最後まで読み終わってしまった。


僕の感想は「泣ける!」でも「がっかり!」でもなく、「すごい!」の一言だ。
ドタバタギャグでデビューした著者が、あいかわらずドタバタギャグを繰り出しながら、ふっと空気がなごむ場面を描く。たった1つか2つのコマで読者の心をわしづかみにする、という技量を身につけたサイバラがとても大きく見える。
チャップリンの作風にも通じる一種のコツを会得したらしい。


一度読んであげたあと、娘が繰り返し読んでいる。この作品が売れているのも、よくわかる。