もっと!冒険する社内報


著者:福西 七重  出版社:ナナ・コーポレート・コミュニケーション  2007年9月刊  \1,575(税込)  228P


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「社内報の広報モニターやってもらってもいい?」と課長からメールが来たのは4月のことでした。
ムムッ! さては、個人でブログを書いているのを見つけられたかな? と一瞬緊張しました。別に悪いことをしているわけではありませんが、会社の仕事と関係ない活動ですので、課長に知られるのは気持ちのいいものではありません。でも、とくに深い意味はなく、広報モニターが持ち回りでうちの課に回ってきたので、私に割り振っただけのようです。


広報モニターに任命されて、最初に確かめたのが、どれが社内報だっけ? ということでした。労働組合の定期報告誌、健康組合の広報誌、パートナー会社の情報誌、お客様向け情報誌等々、私の受け入れ箱にはいろんな種類の印刷物が配られます。
あったあった。これが社内報だ。へ〜、広報部で発行してるんだー。


あらためて読んでみましたが、……面白くありません(笑)。
社内報って、なんでこんなにおもしろくないのかなあ、と手に取ったのが本書です。


著者の福西さんは、リクルート社の草創期に総務、人事、秘書を経験したあと、江副社長から社内報創刊の指示を受けました。初代編集長に就任してから社内報ひとすじに26年過ごします。1997年にリクルートをスピンアウトし、社内広報コンサルティング、サポートを手掛ける株式会社ナナ・コーポレート・コミュニケーションを創業してからは、3000以上の社内報にかかわったという社内報のプロです。


著者に言わせると、多くの経営者は、社内報の役割についてあまりにも理解不足・情報不足。経営の効果的なメディアの一つとして、社内報を戦略的に活用できること、活用すべきことに気づいていないのです。編集をまかされている人も、ありきたりな内容で満足し、もっと読まれる社内報を目指そうとしません。
同じ時間と労力と経費をかけて発行するですから、読まれなければもったいないのです。もっと冒険して魅力的な社内報を作りましょうよ! というのが本書の主題です。


著者の言葉に説得力を与えているのは、自身の編集長としての工夫の数々です。ああしてみよう、こうやってみようという努力が実り、リクルート社の社内報『かもめ』は、全国社内報コンクールで10回も総合優秀賞受賞するような注目すべき社内報に育ちました。
著者の26年の経験のなかでも、社内報が大きな力を発揮したのが、リクルート事件への対処です。1988年7月、江副氏の会長退任のタイミングで、福西さんは社内報の臨時特別号発行を決めました。会長辞任の前日深夜11時、報道陣をかき分けるようにして650人のマネジャーが集合して緊急マネジャー会議(管理職会議)が開催されました。マネジャーに辞任の挨拶をした江副氏は、深夜12時すぎ、辞任を全社報告するためのビデオ社内報撮影。午前1時すぎから社内報『かもめ』特別号のためのインタビューに応じました。
事件の発端から会長辞任にいたる経過、現在の心境を話したインタビュー原稿をワープロに入力し、江副氏が7回のチェックを終えた頃には朝になっていたそうです。
こんなに苦労した特別号に「真相がわからないじゃないか、ナマヌルイ」という意見もありましたが、捜査中の事件で真相を完全に究明することは無理なことです。「マスコミから一方的に情報を流されるだけでなく、会社側からの説明が欲しかった」、「説明してもらって安心した」という肯定派の意見は、福西さんを安堵させたことでしょう。


他社の社内報担当者が、「社員に原稿を依頼してもなかなか書いてもらえない」と悩んでいるなか、福西さんの努力の甲斐あって、『かもめ』は、「ちっとも誌面に出してくれないじゃないか」とクレームを言われるようになりました。そんな雰囲気が会社の風土をつくっていった、と福西さんは自負しています。


こんな人が作った社内報は、おもしろい内容に違いありません。
うちの会社の社内報担当者も、この本を読んで勉強して欲しいなあ。