著者:白崎 博史,石黒 謙吾 出版社:朝日新聞社 2007年9月刊 \1,050(税込) 398P
本ブログ10月3日号で福光潤著『翻訳者はウソをつく!』を取りあげました。その時の紹介文では割愛しましたが、実はひとつ大きな発見がありました。
それは、『翻訳者はウソをつく!』を読んで、
「ダジャレは知的な遊戯だ!」
ということが分かったのです。
けっして「痴的な遊技」ではありませんよ(笑)。
翻訳者としていつも言葉の響きや言い替えに気をつけているうちに、福光さんは、自然にダジャレにも深くのめり込んでいったようです。
ボキャブラリーが豊富だからこそ、いつも「言葉」に敏感だからこそダジャレを使いこなせるものなのだ。という行間の主題を読み取った私は、『ダジャレヌーヴォー』でダジャレの達人として自他共に認める石黒謙吾さんの最新のダジャレ本に飛びつきました。
それがこの本。
『世紀末クイズ』の作者として有名な白崎さんとの共著です。
解けるもんなら解いてみろよ! と言わんばかりの挑発的な書名。
一見、学術本のような雰囲気をたたえたイラストに、17世紀の学者風にエッチングで描かれた二人の肖像画。
各章の扉裏に引用してある「世界史とは」「言語とは」などの広辞苑の文言。
いいなあ。遊びごころ満載じゃないですか!
いざ、1ページ1問のクイズにチャレンジしてみると、とてもレベルの高い問題が揃っていました。「バカには絶対解けない」とある通り、歴史や地理や政治・経済・文学などの各章の表題についての知識がなければ全く歯が立ちません。解けないばかりか、答えを見ても何のことか分からない問題もあります。
しかも、この本のクイズは「単なるお利口さんでも解けない」ように作られている。どういう人向けかというと、「知識があって、しかもダジャレの分かる人」だけが解けるようにできていました。
たとえば、冒頭に登場する世界史の、そのまた第1問。
問題1:17世紀の中頃、ドイツ、フランス、ロシア3国の王様が、誰が一番
友人を多く呼べるか競争した。勝ったのはフランス王だった。
なぜか?
私も、もう30年前とはいえ、大学入試に世界史を選んだ受験生でしたので、人並み以上の世界史の知識は持ち合わせています(エッヘン)。その世界史の知識を総動員して考えました。
17世紀後半にフランス革命が起きます。フランス革命でマリー・アントワネットといっしょに処刑されたのがルイ16世でした。17世紀の中頃はフランス革命の少し前ですので、フランス王といえば、ルイ16世の前の王様、ルイ15世だったはずです。
そのルイ15世が友人を多く呼ぶ競争に勝ったというのです。
何だろう……。
ベルサイユ宮殿……ベル薔薇……宝塚歌劇……パンがなければお菓子を食べなさい……オスカル……ルイ14世は太陽王……フランス革命は関係ないし。
えーと、えーと、えーと……。
ええい! ギブアップ!
さて、答えを見ると……「ルイは友を呼ぶ」から
やられた!
ルイ15世まで近づいていたのに。もう一ひねり足らなかった。
くやしい〜。よーし、次はひっかからないぞ。
と、まあ、こんな具合でハマル人は深くハマってしまいます。
だいたい、世の多くの人は(特に若い女性は)ダジャレに冷たく当たりすぎです。何かというと「さぶーい!!」なんていうワンパターンの反応しかしません。
その点、この道34年のダジャリエである石黒さんは、ダジャレに誇りを持っています。石黒さんのダジャレ道では、「さぶーい!!」しか言わない人は気の利いたレスポンスができない可哀想な人、と考えるのです。
本書と別のところでお聞きした話題ですが、たとえば
「石黒さん、何歳?」
と聞かれて
「ぺ・46歳」 <ぺ・ヨンジュンですよ。念のため。
と答えたとします。
ここで、「さぶーい!!」と言うかわりに、
「マフラーと眼鏡が似合うもんね」
と返すことができる人は、知的な遊戯を楽しめる人です。
さすが、石黒さんのダジャレ道は深い。
あなたも、本書で知識不足とダジャレ不足を思い知りましょう。
そして、「サブーイ!!」なんていうワンパターンの反応を恐れず、これからはダジャレストとして新たな人生を共々に歩んでいこうではありませんか。