副題:本当の自分に近づく戦略的キャリア思考術
著者:田中 和彦 出版社:Nanaブックス 2009年7月刊 \1,260(税込) 205P
またまたリクルート出身者が書いた本を取りあげます。
元リクルート社員が書いたビジネス書は多く、以前に私が紹介した藤原和博著『リクルートという奇跡』、小倉広著『上司は部下より先にパンツを脱げ!』、福西七重著『もっと!冒険する社内報』などでは、リクルート精神を前面に出しています。
どうしてリクルート出身者がこんなに元気なのか。
それは、1988年に起こったリクルート事件による会社存続の危機が、かえって社員たちにリクルート精神の自覚をうながし、修羅場を乗りこえ力を蓄えた人たちがリクルートを卒業していったからではないでしょうか。(あくまで私見です)
本書の著者である田中さんもリクルート事件当時、広報室課長として正面から危機と闘っていました。
本書の版元の社長もリクルート出身の福西七重さんですし、今回の出版にあたって、当時の“戦友”であり大先輩である藤原和博氏(杉並区立和田中学校前校長)から、
『こんな時代だからこそ、自分を掘り下げた人は「次」で必ず笑う―』
という推薦文ももらっています。
先日、本書を含めた3冊の合同出版記念パーティーがリクルートG8ビルで開催され、リクルート創業者である江副氏、大沢氏、現社長の柏木氏など、錚々たるメンバーが集まったそうです。(Nanaブックス 編集遊戯8月31日号 より)
リクルート事件の当事者だった江副氏も昨年『リクルートのDNA―起業家精神とは何か』を出版し、すっかりリクルート事件は昔話になりました。
出版記念パーティーという和やかな席で、どんな恩讐を超えた交わりがあったのか。ぜひ当日参加して自分の目で見たかったものです。
もう少し早く本書を紹介していたら、私も参加できたかも(笑)。
前置きが長くなりました。
本書の内容に入りましょう。
田中さんは、リクルート時代に人事課長、広報室課長、転職情報誌『週刊ビーイング』、『就職ジャーナル』など4誌の編集長を歴任し、充実した会社生活を送っていました。
ところが、就職情報誌統括編集長という立場だった40歳のとき、映画プロデューサーという全く畑違いの仕事に転職しました。しかも、過去の経験を買われてスカウトされたのではなく、求人欄の公募に応募して自分から志願して転職したのです。
それもこれも、ともかく映画が好きだったから。
子どものころから、映画業界で働くことが夢だったのです。
その後、先の見えない失業時代も経験しましたが、田中さんは後悔していません。
好きなことを仕事にするのは素晴らしい! と、実感し、ストレートに読者にぶつけることにしたのが本書です。
40歳になってからそれまでと畑違いの職業に就いた経験から、田中さんは、あの手
この手で読者の本気度を高めてもらおうとしています。
- 好きな仕事をするのに、年齢は関係ない
- 願うだけではなく、思ったら行動せよ。そのために努力せよ!
と背中を押してその気にさせたあと、こんどは、
- いくら好きでもニーズがなければ、ただの趣味
といったん冷や水を浴びせたあと、和田秀樹氏が映画を監督する夢を果たした舞台裏を明かしたりして、やはり好きなことを仕事にするよう読者に訴えます。
最後には、
- 「やっておけば良かった」の人生と「やっておいて良かった」の人生
と、読者をちょっと脅してでも、「好き」と言える仕事に送りだそうとしています。
甘い口車に乗ってはいけません(笑)が、転職を考えていない人も、自分の仕事を忘れて、「もしこんな仕事をしていたら……」と空想(MOSO)してみるのも良いかもしれません。
田中さんは、
あなたは、どんな仕事でも絶対に成功するとしたら何をしますか?
と問いかけています。
私の場合は、配送運転手かなぁ……。
いや、マジで。
以前も書いたことがありますが、学生時代に雑誌の配送のアルバイトをしていたことがあります。
私の配っていたのは「アルバイト北海道」というアルバイト紹介誌でした。何かいいアルバイトないかなぁ、と近所で買った「アルバイト北海道」をパラパラめくっていて、「アルバイト北海道の配達」というアルバイトを見つけたのです。
車を持っている人限定の仕事で、自分の車に雑誌を積んで書店やコンビニに配達するという単純な仕事。たしか1日1万円+ガソリン代が支給されるという、当時にしては高額バイトです。
私が受け持ったのは、札幌市北区の事務所兼印刷所を出発して、東区、白石区、江別市、北広島市、恵庭市、千歳市を回り、苫小牧駅のキヨスクを最後にまた札幌市北区の会社へ戻るという、1日に100km以上走り回るコースです。
先輩に2万円で譲ってもらった愛車の後部座席いっぱいに雑誌を積みこみ、助手席のラジカセで音楽をガンガンかけながら、歌いながら走ります。
愛車といっても360CCのホンダライフでしたので、スピードはたいして出ません。
それでも、広い広い配達区域を文句もいわずに走ってくれました。
ドライブが楽しめて、車内カラオケが楽しめて、しかもお金がもらえる。
卒業までの約1年、私の最後のアルバイト生活はいいことづくめでした。
楽しかったなぁ……。
現実に戻ってみると、これから教育費のかかる小学生の子どもがいる身では、なかなか転職はできません。それに、40代半ばで腰を痛めてしまったため、長時間の運転はできない体になっています。
「配送運転手をやってみたい」は、ノスタルジーにとどめておきましょう。
それに、コンピュータと人の仲立ちをする今の仕事も大好きですから(^o^)/