心の操縦術


副題:真実のリーダーとマインドオペレーション
著者:苫米地 英人  出版社:PHP研究所  2007年1月刊  \1,155(税込)  175P


心の操縦術 真実のリーダーとマインドオペレーション


いままで自己啓発書を読むとき、実は、ちょっと後ろめたい気持ちを感じながら読んでいました。
どんなに良いことが書いてあっても、なかなか実践できません。たくさん読めば読むほど、単に頭で理解しようとしている自分に気づき、これでは著者に申しわけない、という気持ちになるのです。
そんな私の心の中を見透かされたのが本書です。


著者の苫米地氏は言います。
  「私は必ず実践する」
  「学問は実践あるのみです」


自分自身が本当に変わるためには、自分に都合の良いところだけ参考にしてもダメなんだなあ、と思い知らされました。


本書は、機能脳科学という「脳と心を同時に扱う学問」の見地から、真実のリーダーとは何か、リーダーとして自分の心を自在にコントロールし、他の人の心に強い影響を与えていくにはどうすればよいか、ということを明かした一書です。


苫米地氏は、大学で言語学を専攻したのを皮切りに、複数の学問分野に手を伸ばしました。言語学を学ぶうちに人間の言葉を話すコンピュータをつくりたくなって計算機科学の世界に入り、そこから機能脳科学の研究に入りました。博士論文を出したのは哲学科で、後に仏教も研究しています。
お寺にも通って勉強を続け、「私は宇宙をかなり理解したと思っています」という著者は、学問というよりは「悟り」の世界に片足を突っ込んでいるようにも見えます。


そんな苫米地氏が真実のリーダーの条件として挙げたのは
  情報空間(物理的な空間と時間的な空間を超えた抽象的な空間)を
  高い視点から俯瞰できること
ということでした。


「情報空間」という考え方を説明するのは難しいのですが、苫米地氏は一つの例として、「視点の高いお坊さん」を登場させました。
このお坊さん、どこにも出かけずに、
  「うん、俺は今シアトルにいる。
   いや、やっぱり今度はニューヨークにした。
   あっ、でも東京へ行こうかな?」
と考えることができるのです。しかも、本当に臨場感を持ってニューヨークにいると思えたら、ニューヨークにいるのと同じこと、といいます。
そうやって物理的制約から離れ、視点が上がるということは、お金持ちが旅費を気にせずに飛行機で移動するよりも自由ということ。


唯物主義、唯心主義という言葉がありますが、「臨場感を持って感じること」を重視する苫米地氏の考え方は、究極の「唯脳主義」と言えそうです。


「自分の臨場感のある意識状態は、必ず相手に伝わる」と信じる著者からすれば異性に好かれることなど朝飯前です。
相手が自分を見ている視点を、できるだけ高い臨場感ではっきりとイメージすればいい。相手の目から自分の顔を見ることによって、相手の心に、相手の視点の高さで自分が同調するのです。


……分かりますか?
だんだん、頭で理解できない内容に入り込んできましたよ。



ちょっと危ないオジサン、と感じるかれしれません。
でも、中途半端な自己啓発本、ノウハウ本に閉口している方にお勧めです。
試しに服用してみてはいかがでしょうか。