理系思考


副題:エンジニアだからできること
2005年9月刊  著者:大滝 令嗣  出版社:ランダムハウス講談社  \1,680(税込)  255P


理系思考 エンジニアだからできること


政治の世界や経済界のトップは、ほとんどが文系大学出身者で占められています。かたや理系人間は「つぶしがきかない」などと陰口をたたかれ、正等に評価されていない状態が続いている。社会はもっとエンジニアを理解せよ! 理系人間自身も、もっと奮起せよ! というのが本書の執筆動機とのことです。


あれ? 最近、同じような本を読んだような……。そうそう、11月7日のブログで取り上げた『エンジニアに告ぐ逆襲せよ!』です。
両方とも、著者は“元”エンジニア。
ただし、『エンジニアに告ぐ逆襲せよ!』を書いた稲嶺氏が「落ちこぼれエンジニア」という立場から現役にエールを送っているのに対し、大滝氏は自身の理系的思考――論理的に物事を考え、因果関係を理路整然と分析できるその能力――を現在のコンサルタント業にも活かしていることを強調しています。エンジニアを“卒業”した著者が後輩にアドバイスしているという、ちょっと高い位置からの物言いが気になりますが、そこは内容に免じて気にしないことにしましょう。


本書には、エンジニアの仕事をもっと充実させる「自分なりのテーマを見つけよう」や「エンジニアに役立つ勉強術」やリーダーになった時の心構え、転身や起業のアドバイスなど、後進には参考になる内容がたくさん載っています。著者の「ある日突然リーダーになってしまったときのための処世術」なんていう表現には、エンジニアはリーダーになりたくてなっているんじゃない、とういニュアンスが出ていました。


実際に未来をつくり出すことのできるのはエンジニアだ! 間違いなく現代の錬金術師なのだ! という著者の思いがあふれている一書でした。


私が個人的に参考にしようと思ったのは、大滝氏が挙げている推薦図書です。特に、ピーター・ドラッカーの『マネジメント――基本と原則<エッセンシャル版>』は、「座右の書として、ぜひ読みつづけてほしい」という力の入れようです。
  ドラッカーの著作のおもしろいところは、読むたびに新しい発見がある
  こと。読者の立場や状況が変わるたびに、それに応じたヒントを示して
  くれている。
との推薦の言葉にはグッと来ました。


本書は、書評家としても有名な土井英司さんのプロデュース本です。
理系人間の方、ご一読あれ。