ちょい太でだいじょうぶ


副題:メタボリックシンドロームにならないコツ
著者:鎌田 實  出版社:集英社  2006年9月刊  \1,680(税込)  287P


ちょい太でだいじょうぶ メタボリック シンドロームにならないコツ


ちょっとくらい太っていたって気にしなくていいよ。でも、「ちょい太」はいいけど、「おお太」はダメだよ。メタボリックシンドロームに気をつけようね。という健康生活提案本です。


私は、BMI値(肥満度判定値)が26.1のリッパな体格をしています。BMIの基準値は19.8〜24.2と言われていますので、健康診断結果が送られてくるたびに、「減量してください」というコメントを読まされています。
コンピュータが機械的にプリントした、魂のこもっていない言葉なんか見たくもありません。
そんなに何回も言わなくたっていいでしょうがああぁぁぁぁ!
失礼。取り乱してしまいました……。


そんな私に「ちょい太でだいじょうぶ」とは、なんと優しいお言葉でしょう。背筋を正して本を開いたことは言うまでもありません。


こんなに優しいことを言ってくれるのは、患者の心のケアを大切にするお医者さま。あの『がんばらない』を書いた鎌田實氏です。さだまさし『もう愛の唄なんて詠えない』の中にも、「八ヶ岳に立つ野ウサギ」として登場していました。


鎌田先生は、ある日、自分がおデブになっていることに気づき、ショックを受けました。1日1時間のウォーキングが効果的なことは分かっていますが、病院の院長という忙しい仕事をしていると、とてもそんな時間を作ることができません。
自分で工夫しながら編み出したのは、鎌田流の「がんばらないダイエット」法です。


鎌田流ダイエットの内容を紹介する前に、この本にも載っていて、一般的知識でもある、BMI値とメタボリックシンドロームの定義をまず確認しておきましょう。


BMIとは>
  体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出される体重(体格)の指標
    ※ 身長は cm ではなく、m の数値を使います。


<日本のメタボリックシンドロームの診断基準>
次の2つを満たす人はメタボリックシンドローム
1.腹囲が男性では85cm以上、女性では90cm以上である
  ※ 腹囲というのは、おなかのいちばん細いところ(ウエスト)ではありま
    せん。まっすぐに立ち、軽く息を吐いた状態で、おなかに力を入れず、
    おへその高さのおなか回りを測ります。
2.次の3つのうち、2つ以上を満たす
 (1) 高脂血症中性脂肪値が150mg/dl以上、
        HDLコレステロール値が40mg/dl未満のいずれか、または両方)
 (2) 高血圧(最高血圧130mmHg以上、最低血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
 (3) 高血糖空腹時血糖値110mg/dl以上


ふだんから体重を気にして、健康番組やダイエット解説を読んでいると、知識だけは豊富になります。私もこの分野に詳しい人間ですので、この本の7割くらいは既に知っていることでした。
でも、残りの3割がすごい!
何がすごいって、「あっ、これなら続けられるかな」と、もう一度ダイエットに挑戦してみようと背中を押してくれるのです。


たとえば、普通の健康本には、
  「朝食抜くとかえって太るので、朝はしっかり食べましょう」
と書いてあります。朝4:昼4:夜2がよい、と。
でも、朝型の私にとって夕食は家族団欒の唯一の機会です。「夜2」を守ろうとすると、自分だけ食べないくらいの覚悟が必要です。
ところが、鎌田流では「朝2:昼2:夜4」をめざします。友人との会食や、ちょっと食べ過ぎて「朝2:昼2:夜6」になってしまったとしても大丈夫です。
1日くらい気にしないことが大切なので、鎌田先生は
  「投げ出さないでまた次の日から粛々と続ければいいのだ」
と励ましてくれます。


また、タイトルにもある通り、「ちょい太」で良い、と言ってくれています。それも、単なる気休めではなく、「BMI 23から26.9で死亡率が低い」という約4万人を対象にした調査結果を示しています。
だからBMI 26程度の“ちょい太”を目指せ、というのは、なんともうれしい目標です。


私も、この本を読んでから2週間で3キロの減量に成功し、昨夜、1キロリバウンドしました(涙)。でも、最初の1キロ・2キロは誤差範囲、ということですので、気にせず、またチャレンジを続けていこうと思います。


先日テレビを見ていたら、おデブで売っているお笑いタレントの伊集院光が、
  「俺なんか、トータルしたらもう220キロも減量してるぜ。そんで、
   225キロリバウンドしてんだけどね」
と笑いを取っていました。


急な減量はリバウンドのもと。
ダイエット話に飽き飽きしている人も、長続きする「がんばらないダイエット」は、試してみる価値があるかもしれませんよ。


話は変わりますが、まだ私が体重を気にしていなかった20代前半の頃、関西に出張したときのひそかな楽しみがありました。
新大阪駅売店に山積みされている「赤福」と500mlの缶ビールを買って、帰りの新幹線に乗り込みます。(ご存じない方のために補足すると、「赤福」というのは白く柔らかい餅にこしあんを乗せた伊勢名物のお土産です。今は東京でも買えるようになりましたが、当時は新大阪駅でしか見かけませんでした)


仕事が終わった開放感を味わいながら、赤福餅をサカナにビールを飲む。
クーッ!  たまりませんねえ。


そうです。
同好の士は少ないかもしれませんが、私は、甘党でもあり、辛党でもあったのです。


こんな嗜好をしていても、学生時代は体重を気にしませんでした。いしいひさいち作『バイト君』のような、適度なビンボーが身体によかったのです。
それがお給料をもらうようになって、食費をケチらなくなってからは……。
さらに新婚生活の幸せ太りが加わって、私の体重は増加の一途を辿りました。
3年前に腰を痛めたのをきっかけに、やっと6キロの減量に成功。それでも、まだまだ、「おお太」の私です。


では、恐るおそる、私の健康数値を計算してみましょう。健康の第一歩は真実を知ることですから。


半年前の健康診断結果をメタボリックシンドロームの診断基準に当てはめてみます。


まず、復囲が男性では85cm以上    ⇒ もちろんメタボリックに該当します。


次、中性脂肪値。えーっと、60です。 ⇒ おお、高脂血症には該当しないぞ。


血圧は、上が110、下が66。    ⇒ よかった! これも該当しない。


最後に血糖値は90ですね。      ⇒ セーフ。


よかった!
あとはBMI値を下げて(=体重を減らして)、おお太からちょい太にグレードアップすればいいようです。


せっかくここまで読んでいただいて、面白くもない結果になりましたが、私はデブを売り物にするタレントではなく、いちおう書評家ですので(笑)、そこんとこよろしく。