メタボの罠


副題:「病人」にされる健康な人々
著者:大櫛 陽一  出版社:角川SSC新書  2007年10月刊  \756(税込)  175P


メタボの罠―「病人」にされる健康な人々 (角川SSC新書)    購入する際は、こちらから


体重を気にする人間が捨て置けない本を、またまた目にしてしまいました。
体重なんか気にしていない。わたしゃ、もっと太りたいんだよ、という読者の方は、今日も読み飛ばしてください。
ごきげんよう! また明日!!


……ということで、ここから先は、体重を気にしている人しか読んでいないという前提で書かせていただきますね。


ちょっと太めのみなさん! 知っていますか。
厚生労働省は、来年度(2008年度)から全国でメタボリックシンドロームに基づく健診と保健指導の本格的な実施を目指しているんですよ。


通称“メタボ”健診が行われ、ちょっと太めの私たち(国民の約半分)は治療を要すると判断されて、コレステロール値を下げる薬だとか、血圧を下げる薬なんかをジャバジャバ投与されるかもしれないのです。


本書の内容を要約すると、
  厚生労働省の基準値は、ちょっとおかしいんじゃないの?
  まともに適用したら3千万人も病院通いをはじめて、仕事どころじゃ
  なくなっちゃうよ。
  死亡率が低いお年寄りは、本当はちょっと太めの人なんだよ。
ということです。


具体的には、ウエスト周囲径を臍の位置で測定しているのは日本だけであること、男性のウエスト周囲径の基準が女性より小さいのは日本だけであることなど、メタボ判定のいかがわしさを教えています。
気になる数値を引用すると、男性のウエスト周囲径85センチの人、血圧が130/85mmHgの人、中性脂肪150mg/dlの人(著者が「ちょいメタ」な人、と呼んでいる人)が統計的に最も長生きなのです。


おお!
4月4日号で取り上げた鎌田實さんの『ちょい太でだいじょうぶ』を裏付けるような、たのもしいデータではありませんか。

  • 欧米では肥満というのはBMI30以上である。
  • 中性脂肪は500mg/dlまで大丈夫。

とも言っていますよ。


著者の大櫛さんは、全国70万人の健診結果を研究した医学部の教授です。その健診分析の専門家が統計を基に言っているのですから、こんなに心強いことはありません。


しかし、安心はしていられません。いままでおデブは精神的に肩身のせまい思いをしても、太っているからといって何か社会的に不平等な扱いを受けることはありませんでした。
厚生労働省の原案によると、義務化された“メタボ”健診を受けないと、保険料負担金を上乗せするなどのペナルティが検討されています。また、メタボと判定された人が病気になった場合、自己負担金を多くする案もささやかれているとのこと。


いいかげんな判定でメタボのレッテルを貼られ、経済的な不利益も課せられる。これを「差別」と呼ばずして何と呼びましょうや! いや、「迫害」と言ってもいい事態です。


ちょい太のみなさん! このままではあなたも被害者になってしまいますよ。


大櫛さんが書いていることが本当なら、放ってはおけません。厚生労働省と癒着した製薬業界に、また新たな被害を与えられないよう、もっともっとマスコミでも大きく取りあげられて議論されることを願います。