いつまでもデブと思うなよ


著者:岡田 斗司夫  出版社:新潮社  2007年8月刊  \735(税込)  223P


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一年間で50kgもの減量に成功した体験を元に、究極の「レコーディング・ダイエット」の方法を明かしたダイエット本です。
過去のすべてのダイエット本を無力化する、究極の技術と思想が詰まった驚異の一冊! と折り返しに書いてあります。これがダイエット食品なら誇大宣伝で告発されかねない大仰な表現ですが、何しろ、117kgから50kg減量して67kgまで体重を落とした実績がありますので、耳を傾ける価値ありと思って手に取りました。


ただ、著者はオタク学の権威、岡田斗司夫氏です。すんなりダイエット方法を教えてくれると思ったら大間違いで、「なぜやせなくちゃいけないのか」「あなたが太っているのには理由がある」という能書きを先に拝聴しなければいけません。
その「なぜやせなくちゃいけないのか」の説明も一筋縄ではいきません。そもそも……、とどんどん遡って、江戸時代が家柄や身分が重視された「家柄主義時代」だったところまで立ち返らなければいけません。
家柄を最も重視した時代に続き、学歴を重視した明治・大正・昭和の時代を経て、次にやってきたのが「ブランド主義社会」。そして今は「見た目主義社会」になった。だからデブではいけない、と。


あのねー、岡田さん。
そんなリクツはどうでもいいじゃないですか。
あなただって「このように考えたからダイエットを始めたのではない」と言ってるんですから。
はやく本論に入りましょうよ。


ところが、やっと「見た目主義社会」を述べたてた第1章が終っても、おあずけは続きます。
第2章では、「資格取得」や「ファッションセンスを磨く」などの自分に投資する他の手段とダイエットを比べます。それぞれのリスクの程度とリターンの評価を格付けし、ダイエットこそがローリスク・ハイリターンの優れた自己投資であることを力説します。
更に、ダイエット方法を4系統14種類に分類し、それぞれの経済負担、体力負担、時間負担の大小、リターンとリスクの大小を比較検討し……。


もう分かったちゅうねん!
と、切れそうになったころ、やっと第3章から「レコーディング・ダイエット」の開始です。
やれやれ……。


私の書評は、いつも“ネタばらし禁止”でお届けしていますので、具体的ノウハウは本書をお読みいただくとして、ひとことで言ってしまうとレコーディング・ダイエットというのは、その名のとおり、自分の体重・体脂肪率と、自分が口にした全ての食物の内容とカロリー値を記録する方法です。
この方法なら、強固な意志力がなくても長続きするし、最後には意識しなくてもローカロリーの食品しか口にしなくなる、とのことです。


本気で痩せたい人は、第3章から読みはじめてください。
あまりダイエットの必要を感じていない人は「終章」だけでも笑えます。
もうデブを卒業した立場で岡田氏が教えてくれるのは、人並みはずれた体型をしていると、どれだけ大変な思いをするか、ということです。


4Lだの5Lという洋服を買うことが、いかに手間ひまもかかるしお金もかかることか。
外出しても、喫茶店でも新幹線でも飛行機でも不便なことばかり。飛行機では安全ベルトが締まらずに、乗務員さんにエクステンション・ベルトというのを持ってきてもらわないといけません。
岡田氏は次のように嘆いています。
  「こんなベルトの存在、妊婦さんとお相撲さんとデブしか知らない。
   知っててもうれしくない」


人並み外れた体験というのは、何にしても一読の価値ありですよ。