著者:永江 朗 出版社:新潮社 2005年10月刊 \1,365(税込) 222P
前回、前々回も取りあげた永江さんに興味をもち、図書館の蔵書リストから何冊かピックアップして予約してみました。
さっそく次のような本が届きました。
『インタビュー術!』(講談社現代新書)
『狭くて小さいたのしい家』(原書房)
『批評の事情―不良のための論壇案内』(原書房)
『いまどきの新書―12のキーワードで読む137冊』(原書房)
ふーん。いろんな仕事をされているんですね。
といっても、まだ熱烈なファンというわけではないので、ちょこちょこっとひろい読みして今の私の興味に合わないものは遠慮させていただきました。
(余談ですが、こういうことができるが図書館のいいところですね。自分で買うとなったら、中身を見ないでこんなにランダムに手をつけるわけにはいきません)
こんなぜいたくな選び方をするなかで、私を満足させてくれたのが今日の一冊、『話を聞く技術!』です。
永江さんは書評だけでなく多くのインタビュー原稿も書いておられ、ご自分のインタビューノウハウを『インタビュー術!』にまとめておられます。
本書は、その続編……ではありません。
世の中には著名なインタビュアーがたくさんおられます。他の人もそれぞれ独特の工夫をしているのではないか。
ならば、それをインタビューしに行こう! というのが本書です。
ふだんインタビューする側の人も、自分がインタビューを受ける側になると身構えてしまいそうです。でも、本書には、そんな気配はまったく感じられず、和やかな雰囲気のなか、ご自身のインタビュー術、工夫、流儀について語ってくれています。
本書に登場する10人の達人インタビュアーのトップは、黒柳徹子さんです。
ギネスブックにも載る長寿番組「徹子の部屋」はどのように作られるのか、インタビューしているとき、心がけていることは何か、を語ってくれました。
週に5日放送する「徹子の部屋」は、毎週6人ずつ収録するそうです。ユネスコ大使として海外へ行ったりするので、毎週1人ずつ多くインタビューして余裕を作っておくとのこと。
事前にインタビュー相手と打合をしてきたディレクター6人との事前打合は、なんと9時間かかることもあります。
しかも、相手が本を出していると必ず事前に読む。相手が作家だと、処女作・代表作・最近の本と3冊くらいは読んでおく、とのこと。
聞けば聞くほど、この人は超人ですね。
心理療法家の河合隼雄氏の「聞くことに始まって、聞くことに終わる」では、対話を通じて相手を治療してきた人ならではの、「覚悟」のようなものを感じました。
河合さんも、はじめは相手にすぐ忠告したり助言したりしていました。
でも、言っても相手には通じません。
そもそも忠告や助言で変わるような人は、心理療法家のところに来ない。誰かが忠告したり助言して、それでも変わらないからやってくるわけです。
永江さんが、
「でも、新橋あたりで飲んでいるサラリーマンを見ると、たいてい上司や
先輩が若い者に忠告したり助言したりしていますね」
とツッコミを入れると、河合さんは答えました。
「あれは上司の精神衛生に非常にいいんです。
忠告を受けている方が上司の心を癒しているんです。
だから飲み代は上司や先輩が払うでしょう。
カウンセリング料です、あれは」
なあーるほど!
他にも、糸井重里氏(コピーライター)や、iモード生みの親の一人で『iモード事件』著者の松永真理さん、変わったところでは匿名の刑事さんにまで、相手から話を引き出すコツを引き出していました。
やはり、これだけ相手と意気投合した(ように見える)のは、永江さんのノウハウがあるのでしょうねえ。
本書を読んで気づいたのは、インタビュー相手とのツーショット写真が、まるで仲のよい友だちのように見えることです。ある時はTシャツにジーンズ、ある時はジャケット、ある時はスーツにネクタイでインタビューに臨んでいます。
例外はありますが、ほとんどが相手の服装にマッチしていて、親密な雰囲気を醸しだしていました。
いい本を読ませてもらいました。
もうちょっと、永江さんの本を読んでみようかなぁ。
よし、次は『不良のための読書術』(筑摩書房)を予約してみよう!