副題:書いてお金を稼ぐには
著者:永江 朗 出版社:日本放送出版協会 2004年6月刊 \1,218(税込) 316P
「文章読本」「文章の書き方」「文章術」なんていうタイトルを見ると、ついフラフラと手に取ってしまいます。
勉強になることも多いのですが、自信をなくすこともあります。
最近では山口文憲さんの『読ませる技術』で、あれもダメ、これもダメと厳しくダメ出しされました。
もうショックも和らいだので、性懲りもなく類書に手をだしました。
著者の永江朗さんは、フリーランスのライターです。
インタビューの本も書いておられますが、永江さんといえば、やはり書評ですね。
独特の切り口がおもしろく、私も日曜日の朝日新聞書評欄でみかけると、必ず目を通しています。
その永江さんの文章作法にはどんな原則があるのかな、と期待して読んだところ、あまり原理原則を定めない、という臨機応変な内容でした。
漢字にするかひらがなにするか、という重要な問題も、決まったパターンを持っていません。ひらがなが続いた文章のなかでは漢字を使い、漢字が多いと感じた場合はひらがなを多くする。それが永江流です。
文脈と見た目の雰囲気で決めればいい、という信念なので、編集者から統一するようアドバイスされても無視するそうです。
文章術の本で必ず出てくる文体(「です・ます体」か「だ・である体」か)の話題も、
「はっきりいって、文体なんてどうでもいいことです」
とバッサリ。その上で、
「整っているものよりも破綻したものの方がインパクトがあります。
初心者には、あえて文体を破壊することをおすすめします」
「文体を壊そう、壊そうとしていると、だんだん文体が整っていきます。
不思議なものです」
というアドバイスをしてくれましたよ。
また、著者の仕事道具の話題も興味深く読ませてもらいました。
永江さんがご自身でインタビューテープを起すときには、フットペダル式のコントローラーがついたテープ再生機を使っているそうです。
また、データ原稿にしるしを付けるときは、マーク目立ちすぎないように「プレスマン」という0.9ミリで2Bの芯を入れたシャープペンシルを使っているとのこと。
参考になることがたくさんあった本書ですが、やはり厳しいお言葉も。
もしインターネットで見つけた誰かの文章が、自分の感じたことと同じ内容だったらどうするか、という問題を永江さんは読者に投げかけました。
アマチュアなら
「発表したのは向こうが先だけれども、同じことを考えていたのだから、
その文章の存在は無視して、自分が思ったとおり(同じ事を)書く」
という答でも構わない。
しかし、プロは違います。
ほかの誰かと同じことを書いたのでは商品になりません。
別の角度から文章を書くか、さもなければ、この件については書かない、(=この仕事を断る)という結論を出さなければならない。
ここが、書いてお金をもらえるかもらえないかの境界線、とのこと。
この本を読むほとんどの人がシロウトのはずなのに、客を退屈させてはいけない、客を眠らせてはいけない、プロとしてのホコリを持て! とは……。
帯の写真は優しそうに微笑んでいるのに、文章術の話題になると、やっぱり厳しいのですね。