著者:東野 圭吾 出版社:文芸春秋 2005年8月刊 \1,680(税込) 352P
言わずと知れたベストセラー。私の通っている図書館でもすごい人気です。
幸い、本書が直木賞を受賞する前に予約したのですが、それでも半年以上待たされました。(今予約している人が手に取る頃には、本書の人気も下火になっているかもしれませんね)
内容は、純愛犯罪ミステリーです。
ネタばらしは、もちろん御法度ですが、冒頭部分だけ紹介しておきます。(冒頭部分も知りたくない人は、ここからは読まないでください)
別れた亭主から身を隠して暮らしている靖子の前に、ダニ亭主の富樫が現れました。止むを得ず自宅で2万円を渡した靖子でしたが、帰ろうとした富樫の後頭部を娘の美里が銅製の花瓶で発作的に殴りつけました。ふらつきながら立ち上がった富樫が娘を殴りながら「ぶっ殺してやる」と叫んだとき、靖子は目に入った電気こたつのコードで富樫の首を絞めました。
動かなくなった富樫を前に困惑していた二人を救ってくれたのは、となりの部屋に住んでいる高校教師の石神です。靖子に好意を持っているらしい石神は、二人を守るために死体を片付け、いろいろな偽装工作をしてくれました。
しかし、すぐに死体は見つかり、執拗な刑事の追求が……。
最後の最後に明かされる石神の献身は、驚愕させられるものでした。
ぐいぐい読者をひっぱる内容のおかげで、朝は電車を乗り越しそうになり、帰りは本当に1駅乗り越してしまいました。本に夢中になって電車を乗り越すなんて、年に1度あるかどうかのできごとです。
さすが、直木賞を受賞するだけのことはあります。
ひとつだけ贅沢を言うと、本書を読み終わったあと、あまり後を引きませんでした。
古い話を持ち出しますが、やはり、松本清張を読んだときの読後感――人間の業の深さに打ちのめされるような後引き感が忘れられません。
本書もトリックは超一流だったんですけどねぇ……。