ハンバーガーを待つ3分間の値段


副題:ゲームクリエーターの発想術
著者:斎藤 由多加  出版社:幻冬舎  2006年1月刊  \999(税込)  189P


ハンバーガーを待つ3分間の値段―ゲームクリエーターの発想術 (幻冬舎セレクト)


人気ゲームソフト『シーマン』の開発者が、そのユニークな発想法を明かしてくれる。……と聞いては読まずにおられません。


日常生活で違和感を感じたとき――著者のことばで表現すると「俺の立場が無視されているじゃねぇか!」と憤慨したとき――著者は持ち歩いているカメラのシャッターを押します。
あとで写真を見ながら、なぜ自分がムッとしてしまったかを分析し、せっかくなので、そこから物事の本質を探る考察をするのです。この行動自体がユニークですね。


表題にもあるように、ファーストフード店で何分か待たされる、という場面にはよく出会います。このとき、あと何分くらい待たされるか分かっているとイライラしませんが、単に「少々お待ちください」と言われただけだと、わずかの待ち時間をものすごく長く感じるものです。
著者はこの腹立たしい状況を思い起こして、
  「なんで待つことはこんなにつらいのだろう?」
と熟考します。
著者の考えでは、「待たされている」ということは「自分の未来を選択する権利」を失った状態だから不快感や憤慨を覚えるのです。少しおおげさかもしれませんが、人間の尊厳というのは自分の力で自分の未来を選択していくことを言います。待たされている状態というのは人間の尊厳が絶たれた状況なのです。


なんだか、深思熟慮のようなヘリクツのような……。


マクドナルドから得られた著者の結論は、
  「本当のサービスとは客に選択肢を与えること」
というものです。
この結論には納得です。
誰だって、「○○はお時間が△分かかりますが、よろしいでしょうか」と言ってくれたほうがうれしいです。そうすれば、「じゃ、別の品物にする」とか、「じゃ、別の店に行く」という選択ができますから。


私が深く納得したのは、「無断駐車厳禁 罰金2万円いただきます」という表示についての著者の考えです。
一方的に告知があったからといって、同意したことにはならない。一方的に言っていいのだったら、たとえば自宅のドアに「朝刊の配達忘れ、罰金30万円」とか、「許可なく呼び鈴を押したら罰金300万円」と書いておくのもアリになってしまう。
無断駐車して後ろめたい相手の弱みにつけ込む、というのは、不当な要求ですよね。


そういえば、最近、薬局で私も不快な思いをしました。
カゼで医師の診察を受け、風邪薬の錠剤と、「咳のひどいときだけ飲んでください」という咳止めシロップを処方されました。
処方箋を持って薬局に行き、「咳止めシロップは前回のがまだありますから、今回は要りません」と伝えたところ、「冷蔵庫に入れておけば保存がききますから」と、余分な薬を押しつけられてしまいました。
体がだるいので相手の言いなりになりましたが、後で考えると、やっぱり納得できません。
どうして不快に思ったのか。こんどゆっくり、斎藤さんの思考法で考えてみることにします。