著者:北野 幸伯 出版社:風雲舎 2005年1月刊 \1,575(税込) 269P
1970年生まれの著者は、ソ連に留学して「卒業生の半分は外交官に、半分はKGBに」というエリート大学を卒業した、という変わった経歴を持っています。ゴルバチョフにあこがれた、というのが留学の動機ですが、おかげでソ連邦の崩壊を肌で体験し、エリツィン、プーチン大統領によるロシア政治を現地で観察してきました。
著者が大学で教わり、その後の世界の出来事で実感したのが、
「外交の目的は国益の追求である」
「国益とは金儲けと安全の確保である」
ということでした。
本書は、著者の培った世界観・歴史観を基にして、分りやすく国際情勢を分析し、今後日本の取るべき道を示す提言書です。
著者の分析によると、ソ連が崩壊したあとの唯一の覇権国家であるアメリカは、財政赤字と貿易赤字の累積がとりかえしのつかないほど巨額になり、内情はボロボロ、ということです。
アメリカが破綻しないためには、ドルを防衛し、世界の石油利権を押さえ続けるしかない。そのためには、戦争をし続けるしかありません。
アメリカの地位を脅かそうとしているのは、
経済、軍事両面で成長著しい中国、
ユーロを機軸通貨にしようとしているフランスを中心にしたEU、
そしてソ連崩壊後の混乱から立ち直り漁夫の利を目指しているロシア
です。
著者の予測では、没落寸前まで追いつめられたアメリカは、難くせをつけてイランに戦争をしかけ、アラブ全体を巻き込んだ「中東大戦争」に勝利します。
中東の石油を支配下に置いたあとは、台湾独立をけしかけて中国との戦争を開始する。米中戦争になった時には、日本が戦場になりますよ、というところまで来ると、背筋がゾッとしました。
著者が予言する米中戦争は、北京オリンピック後の2010年ごろに起る、とのことです。
恐ろしい予言です。
中学生でもわかりそうな口調で語りかける著者の説明は、とても説得力があります。しかも、良く当たるらしいのです。(本書の元になった著者のメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」には、○年○月のメルマガで書いた予測が当たった、という報告がよく出てきます)
こんな恐ろしい予測は当たってほしくありませんが、どうなんでしょう。
本書のおかげで、今まで読み飛ばしていた新聞の国際面に興味を持てるようになりました。
注意深くウォッチしていくことにしましょう。