イソップ株式会社


2005年5月刊  著者:井上 ひさし【著】 和田 誠【絵】
出版社:中央公論新社   \1,680(税込)  303P


イソップ株式会社


イソップ物語といえば、教訓に満ちた短い物語の代名詞で、「金のオノ、銀のオノ」「アリとキリギリス」「羊飼いと狼」「北風と太陽」など、誰でも知っている童話集です。私は「すっぱいぶどう」「ろばをかついだ親子」のちょっと皮肉な味付けが好きです。


本書は、イソップ物語とは関係ない「イソップ株式会社」という小さな出版社の社長と2人の子どもが織りなす一夏の物語です。
星光介は7年前に妻を亡くしましたが、結婚前に妻と約束した「1日ひとつお話をつくって夕食後に家族に語る」という習慣を続けています。夏休みに社運をかけて海外営業に出かけることになり、留守中に東北の光介の実家で過ごす中学1年生のさゆりと小学4年生の洋介には、毎日手紙を送ることになりました。
光介が書きためたお話を実際に送ってくれるのは、佐々木弘子さんという「イソップ株式会社」の社員です。
送られて来る話には、いつもセンスの悪い教訓が付いていますが、ときどきワープロに打ち直したという教訓の書いていない物語も混じるようになりました。どうも、弘子さんが代作しているみたいです。娘のさゆりは、なんだか面白くありません。
楽しかった夏休みも終わり、2人は東京に帰ってきました。父親の光介が帰国早々2人に話がある、と言います。その話とは……。


本書には、お話の内容を示すカラーイラストが1話にひとつずつ付いており、それ以外に夏休みを過ごすさゆりと洋介の白黒イラストが描かれています。井上ひさしが本文を書いているのですが、どうも、この本は「和田誠の本」という印象が強い気がします。
和田誠のフワッとしたイラストを見ていると、誰が書いた文章もフワッとしてくるから不思議です。朝日新聞夕刊(関東だと水曜の夕刊)に連載している「三谷幸喜のありふれた生活」にも和田誠がイラストを書いており、本書とはどう見ても違う文章なのですが、「同じ人が書いた」と言われても信じてしまいそうです。
そういえば本書の主人公の名前は「星」です。和田誠星新一ショートショートにもイラストを書いていましたねぇ。星新一には『未来いそっぷ』という作品集がありましたが、何か関連があるのでしょうか。……と『未来いそっぷ』の文庫本を見たら、イラストは真鍋博でした。考えすぎ! ♪チャンチャン!