副題:なぜ、我々は「志」を抱いて生きるのか
2005年3月刊 著者:田坂 広志 出版社:くもん出版 価格:\1,260(税込) 240P
社会起業家をめざす次世代の人材育成に力を注いでいる著者が、「この地球に生きるすべての子供たちに」伝えたい想いを詩のように謳い上げた著作です。
人生という名前の山を登ろうとしている若者たちに、「志」を抱いて生きることを忘れないでほしい、と著者は訴えます。その「志」とは何か、なぜ「志」を抱いて生きるのか。この大きな問題に真正面から立ち向かい、著者は彼の信じる答えを剛速球のように投げ込みます。
答えの第1は「悔いの無い人生を生きるため」です。著者は言います。
人は、かならず、死ぬ。
この人生は、ただ一度しかない。
この二つの真実をみつめるとき、
誰しも、思う。
悔いの無い人生を送りたい。
著者の渾身の直球勝負に、場違いにバッターボックスに立った中年読者の私は目を見張りました。
続いて繰り出される第2の理由、第3の理由にも全く手が出ません。野球ならばストレートの三振でバッターアウトになるところですが、著者は間髪を入れずに第4の理由、第5の理由も真正面から読者に投げかけました。
ゆっくりとマウンドを降りた著者は、バッターボックスに歩み寄りながら、この5つのボールの根底にあるのは「人間成長」の覚悟であること、一人ひとりの人間成長が人類の成長に繋がることを語りかけます。
共に人類の歴史を拓こう、と。
「志」を抱いて歩むかぎり、
それは、かならず、素晴らしい成長の糧になる。
そのことを思い出してほしい。
今の日本社会には、真正面から人生を語る人を揶揄したり嘲笑したりする風潮があります。これほどストレートに人生を語る人がいると、「巨人の星をめざせって言い出しそう」とか「なんかヘンな宗教なんじゃない」などと茶化す人の声が聞こえてきそうです。
しかし、この本を読む限り、田坂氏は変な下心なしに真っ当な人生観を問うている「まっとうな人」です。この著者のメッセージは、せちがらい世の中にどれだけ毒されているかを試すリトマス試験紙のようなものかもしれません。
一言ひとことを噛みしめるように、じっくり味わいながら読むことをお薦めします。