「老いるショック」は3度来る!


副題:人生90年の時代
2005年1月刊  著者:江見 康一  出版社:かんき出版  \1,365(税込)  197P


「老いるショック」は3度来る!―人生90年の時代


「老いるショック」は「オイルショック」のダジャレです。おいおい、84歳にもなってオヤジギャグかよ! と、まずツッコミましょう。
高齢化社会を憂う本は多いですが、自分自身が歳をとっていく体験を踏まえた内容、しかも経済学者が書いた本というのは珍しい。専門用語が並んでいるわけでもなく、読みやすい内容で、後輩の私たちに「これから老いる心構え、サイフ構え」を伝授しています。


老いには「フレッシュオールド」「ミドルオールド」「シニアオールド」の3段階があり、ひとくくりにした社会保障はダメ。「フレッシュオールド」はまだまだ働ける。マネープランはこうすべき。等々は、著者の本職ですからもちろん一読の価値ありです。
でも、お金の話以上にためになるのが、3度の「老いるショック」を乗り越えた著者が強調する「心構え」についての内容です。
老いが進むと「生きがい」も少なくなっていきます。著者自身も孫が生きがいだった時期がありました。孫が熱を出すと自分も熱を出すという濃密な一体感があり、孫の成長を見ていると自分の老いの侘しさを忘れていたのですが、たった3年で孫離れしなければならなくなりました。生きがいの切り替えを迫られた経験から、「老後になってあわてて生きがいを探しても遅い」と著者は結論します。


健康も大切です。健やかに老いるためには、その前に健やかに働いていなければダメで、その前に健やかに育っていなければダメ。健やかに老いる、ということは、自分なりの健康法を追求して歳相応に自然体で年齢を重ねていくことである。と著者は言います。
でも、ムリは禁物といいながら著者自身は81歳で東京から赤穂まで680Kmを自転車で走破したりしてますから〜。残念!


体の自由がきかなくなる、なんてことは遠い先のこと、と思っていませんか。私も、つい最近まで、そう思ってました。ところが、昨年8月に腰を痛めて何ヶ月も不自由な生活が続くと、「このまま歩けなくなったらどうしよう」と不安がよぎりました。その後やっと回復しましたが、おかげで「自分にも体が自由に動かせなくなる日が来るんだなぁ」という実感が湧くようになりました。
「いつまでも若くない」と自覚する大切さ、かといって悲観的にならずに前向きに準備する心構えを教えてくれました。