著者:沢木 耕太郎 出版社:新潮社 2022年10月刊 2,640円(税込) 574P
沢木耕太郎の作品は第10回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『テロルの決算』や第1回新田次郎文学賞を受賞した『一瞬の夏』など、初期の作品から愛読してきた。
しかし、紀行文の金字塔と呼ばれる『深夜特急』はなぜかページが進まず、読みはじめてから9年も経つというのに、全6巻ある文庫本のまだ第3巻に入ったばかり。カルカッタに到着したところなので、まだまだゴールは遠い。
おまけに、このブログをお休みしている間に長い文章を読む体力が落ちてしまい、本を広げて10分後にはまぶたが重くなってしまい、コックリコックリしてしまう始末だ。
そんな僕が沢木耕太郎の9年ぶり長編ノンフィクション、しかも「旅」が題材のこの本を読みとおすことができるのか不安だったが、読書力回復のためのリハビリと覚悟して読みはじめた。
心配していた通り、はじめは少し読んでは休み、少し読んでは休みをくり返してしまった。それでも、一見単調な旅の行程に少しずつ熱中するようになり、1ヶ月もしないで読了することができた。
ことし1冊目の書評は、僕の読書力回復に力をかしてくれた本書を取りあげ、旅の主人公である西川一三と聞き役の沢木耕太郎が紡ぎ出す物語の魅力について書かせていただく。
続きを読む