お義父さん


著者:はなわ  出版社:KADOKAWA  2017年12月刊  \1,350(税込)  222P


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毎週月曜よる7時から日本テレビ系列で放送している「有吉ゼミ」というバラエティー番組がある。


番組名に「有吉」と付いているとおり有吉弘行が司会進行する番組だ。
有吉弘行は毒舌で知られているが、ゴールデンタイムなので全く毒を吐かない。


芸能人のロケを中心に放送している番組のなかで、お笑いタレントの「はなわ」家族の日常を取材したコーナーが面白く、我が家でも「はなわ」一家が出る回を楽しみにしている。


ご存知ない方のために「はなわ」氏を簡単に紹介する。


はなわ」は1976年生まれで、現在41歳のお笑いタレント。
頭のてっぺんの髪の毛を金髪に染めて固め、オニの角のように突きだした独特のヘアースタイルで、エレキベースを弾きながらコミックソングを歌っている。


出身地の佐賀県をおちょくった「佐賀県」という曲が2003年に大ヒットし、紅白歌合戦にも出場した。


「ヤホーで調べました」を持ちネタにしているお笑いコンビ「ナイツ」ボケ役の塙宣之はなわのぷゆき)は、実の弟である。


結婚して子どもが3人になったとき、「子供を育てるのは佐賀がいい」という妻の提案を受け、2011年に佐賀県に引っ越した。


有吉ゼミ」に登場するはなわ一家を見ていると、食べ盛りの3兄弟の豪快な食事の様子がにぎやかで楽しい。
また、3人の子どもがはなわと同じ柔道に励む様子、大会に向けた練習、試合当日の応援、試合展開など、緊迫する場面も登場して目が離せない。


2017年春の「有吉ゼミ」で、妻の誕生日に曲をプレゼントするシーンが放送された。


『お義父さん』という題名の曲は、妻の父(義父)に語りかける形式で、妻との出会い、結婚、そして現在までの過程を歌いこんだものだった。


ここで『お義父さん』の歌詞を紹介したいのだが、正確に引用するとJASRACにお金を取られるので(笑)、歌詞を引用せずに歌の内容を説明させていただく。


はなわは「お義父さん」に会ったことがないので、結婚してもう15年になることを「お義父さん」に知らせた。


妻が天然ボケなおかげで、いつも家族が笑って過ごしていることを報告し、これも、きっと「お義父さん」の遺伝に違いない、とお礼の気持を伝える。


このあと、はなわの口ぶりが変わる。

「お義父さん」は、(僕の)妻が産まれてすぐ家を出てしまったので、娘がどうやって成長してきたか知らないでしょう。
お金が無くて教科書も買えず、隣のクラスの友だちに借りていました。
4つ年上のお姉ちゃんはグレてしまって、家は不良たちのたまり場になってしまいました。
狭い団地で自分の部屋に鍵をかけ、毎晩泣きはらしていたのですよ。


20歳過ぎに、僕と東京の安アパートで暮らしはじめ、結婚式ができなくても普通の家族でいられれば充分だと言ってくれました。


妻は「お義父さん」のことを一度も悪く言ったことがありません。
子どもも産まれて、幸せな日々を送っています。
よかったら、いつか孫に会いに来てください。
一杯飲んで、「お義父さん」と話したいです。


最後に、結婚してもう15年経つことをもう一度語りかけ、妻が3人のママとして頑張ってくれていることと、「お義父さん」への感謝の気持を伝えて歌を終えた。


有吉ゼミ」に登場するはなわの妻は、食べ盛りの3人の子どもの子育てに追われながらも、元気で幸せそうな女性だった。


視聴者が「お義父さん」の話を知らないのはもちろんだが、それまで妻自身も子どもたちに多くを語ってこなかったという。


はなわは、子どもたちに教える良い機会だと考えたのだ。


歌っている途中から、妻の目に涙があふれた。
歌い終わると声をあげて泣いたのは、長い間我慢していたものが堰を切って流れ出たのだろう、とはなわは思った。


実は、妻が泣いてしまった理由は、もうひとつあった。


ここから先は、「有吉ゼミ」では放送していない内容である。


この歌をプレゼントされる1週間前、「お父さんが末期ガンで会いたがっている」との知らせが届いていたのだ。


はなわに相談せずに、妻は「会わない」と決めて断った。芸能人であるはなわに迷惑がかかる、と思ったからだ。


父が「会いたい」と言ってきたことは、はなわに言うつもりはない。


秘密にしたまま忘れることにした彼女だったが、何もしらないはずのはなわが『お義父さん』を歌ったことに衝撃を受ける。


遠い昔に出ていった父。
「会わない」と決めたばかりなのに、はなわは歌詞のなかで、「お義父さん」に会いたいと言ってくれた。


この不思議な偶然に、何かの必然を感じたのだろう。
妻は言った。

「こういう奇跡ってあるんだね。
 お父さんに会いに行けってことなのかな」


このあと、義父に会いに行った際のエピソードや、死を目前にした義父がもたらした奇跡が展開されるのだが、あとは読んでのお楽しみとさせていただく。


詳しくは、本書の終章をお確かめいただきたい。



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