どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか
今日は、中年おじさんの対談本をダブルで取りあげる。
暑苦しくて、華のない中年の対談。しかも2冊。
こんな本を面白がるのは、やっぱり中年男性だけかもしれないなぁ。
これじゃ、「読書ノート」読者は、ますます男が多くなっちゃうかなぁ。
……と、余計なことを考えつつも、まぁ、夏休みで読み飛ばす人も多いからいいや! と開きなおっておこう。
著者:みうらじゅん、リリー・フランキー
出版社:扶桑社 2011年11月刊 \1,260(税込) 226P
1冊目は、新語「マイブーム」や「ゆるキャラ」の創作者で仏像オタク
でもある みうらじゅん と、『東京タワー オカンとボクと、時々、
オトン』で一躍有名になり、アニメ化された『おでんくん』の原作者と
しても知られるリリー・フランキーの対談集である。
2010年春、みうらじゅんの自宅にリリー・フランキーが遊びに来ていたときのこと。
縁側でタバコをくゆらせながら夕陽を見つめ、ふと「死ぬ」ということが話題になった。
みうら「……あのさ、最近、気づいたんだけど、どうやら人間っていつか死ぬってね」
リリー「どうやらね、死ぬっつーじゃないですか」
みうら「うん、どうやら死ぬっつーね」
そのまま深夜まで、人生にまつわるさまざまなことについて、とめどなく語り合ったという。
この日の気持ちの昂ぶりを記録しておきたい、という2人の強い希望でこの対談集が作られた。
これまでに連載や対談で何度も話あってきた2人が、いままでにないほど盛り上がったのは、「いずれ、死ぬっつーじゃないですか」と「死」を意識したときに、お互いの会話から余計な飾りがなくなったからだ。
人生の本質を深く語り直しておきたい、という2人の要望で、1年かけて対談がくり返された。ある時は都内の居酒屋で、またある時は、箱根の旅館で。
一部、中年の酒飲み話そのものの箇所もあるが、こうして1冊の本にしてみると、人生の真実を語った珠玉の対談集! に見えなくもない。
下積み期間が長かった2人の会話には、社会通念や常識にとらわれた一般人の頭をガツンと一発たたいてくれる力がある。
たとえば、生きざま、死にざまについての2人の決めゼリフ。
みうら
人は生まれた瞬間に余生が始まる。
「死ぬために生きる」のではなく、
「死ぬまで生きる」だけ
リリー
死んだら全部チャラだと思っただけで
もう怖いものはない
なんだか、悟っているような、いないような……。
こういうカッコつけた言葉もいいけど、僕の印象に残ったのは、2人の食えない時代の話。
みうらじゅんは30歳近くまで仕送りしてもらっていたそうだし、リリー・フランキーはサラ金をはしごしていた時代があると言っている。
カネがないつらさは、リリーが語った次のエピソードに表れている。
料金を滞納して水道も電気もガスも止められた部屋に住んでいたときのこと。以前つきあっていた女の子に電話していて、「ちょっと会おう」ということになり、彼女はリリーの部屋にやってくる。
暗くなっても電気がつかないので、2人は外に出た。
リリーが腹すいた、と言うと、彼女は弁当を買ってくれ、駅で別れぎわにリリーの胸ポケットに千円札を2枚入れてくれた。
いま考えれば、前の彼女に弁当と2000円もらって情けない……、と落ち込みそうなものだが、実際には、「弁当食えてよかったー」、「2000円もらえて超ラッキー!!」と心の中でジャンプしてしまったそうだ。
恥ずかしい、という感覚もなくなった当時の自分には戻りたくない、というリリーの言葉は、貧乏を経験している者にしか言えない。
社会の底辺を歩いてきた2人の人生訓には、説得力があるのだ。