子育てのツボ 夜回り先生50のアドバイス


著者:水谷 修  出版社:日本評論社  2010年11月刊  \1,260(税込)  165P


夜回り先生50のアドバイス 子育てのツボ    ご購入は、こちらから


著者の水谷修さんは、横浜市で夜間高校の教壇に立っていたとき、子どもたちの非行防止や薬物汚染の拡大防止のため、繁華街の深夜パトロールをするようになった。
2004年に教師をやめてからは「夜回り先生」として、メールや電話による子どもたちからの相談に応じたり、講演活動をして全国をかけまわっている。


逃げずに子どもと向かいあう姿勢にうたれ、僕の読書ノートでも、次のように何度か水谷先生の本をとりあげている。

関連記事
  『夜回り先生』     ⇒2005年05月12日読書ノート
  『夜回り先生のねがい』 ⇒2007年05月21日読書ノート
  『だいじょうぶ』    ⇒2009年04月27日読書ノート


夜の世界で暴れまわる子どもたちとかかわってきた水谷さんは、彼らのお父さん、お母さんと対面していつも感じていたことがあったそうだ。


それは「子育てが下手だなぁ」ということだ。


とくにまじめな親ほど、ボタンのかけ違いのような些細なことでわが子の心を深く傷つけてしまう。


たとえば、子どもが不登校になったとき、お母さんは「いいよ、今日は休んで。でも明日から学校に行こうね」といって、優しかった。
次の日も学校に行かない子どもに、「今日は気分転換にドライブに行こう」と誘ってくれた。


しばらく学校に行けない日が続いたあと、試験の前日にお母さんが言った。
「なんで、あなたは学校に行かないの。進級できないでしょう」と。


こんな残酷な子育てはない、と水谷さんは言う。
「優しいお母さんを鬼のように変えたのは私だ」と、この子は自分を責めた。そして、本当に心を病んでしまったという。


この例にかぎらず、多くの反面教師を前にして水谷さんが感じてきたこと、子育てのツボともいえる具体的なアドバイスが本書にまとめられている。


夜回り先生だからといって、高校生の親に向けたアドバイスだけではない。小学校入学前、小学生、中学生、高校生の各成長段階と、子どもが問題を起こしたときという5部構成で、それぞれどう子どもと接したらいいかを具体的に提案してくれている。


僕の娘は小学校3年生で、まだ「ねぇー、パパー」とすり寄って来る甘えんぼうだが、ときどき反抗的な態度を見せるようになってきた。親として愛情たっぷりに育てているつもりだが、それが親バカになっていないか、溺愛すぎないか、自分で判定するのはむずかしい。


子どもの心をよく理解している「夜回り先生」の本。しかも「子育てのツボ」という魅力的タイトルに惹かれ、一気に読ませていただいた。



修羅場をくぐってきた著者ならではのアドバイスを予想したが、意外にも常識的内容も多かった。


第一部の「子どもが幼いとき」では、
 「できるだけ多くのスキンシップを」、
 「優しい音楽や美しい映像に触れる」ことを勧め、
第二部「子どもが小学生になったら」では、
 「父親も学校行事や授業参観に参加する」とアドバイスし、
第三部「子どもが中学生になったら」では、
 「家族いっしょの食事タイムを大切に」と食育の大切さも教えていた。


また、「絵本や童話の読み聞かせを」や、「週に一回は、親子で『川』の字に」など、わが家で実践しているものを見つけてホッとした反面、テレビを見ながら食事するのはやめてほしい、というわが家の習慣を否定する内容もあった。


食事中は家族の話し合いの場に、という趣旨も分かるのだが、「家族全員で同じ番組を見て、その場で感想を言いあう」というわが家の
コミュニケーションスタイルも悪くないと思うんだけど……。


これもアリですよね。水谷先生。



子どものために、場合によっては親と対決してきた水谷先生の言うことなので、すこし親に厳しすぎる内容も含まれていることを割り引いて読むことをお勧めする。