通勤電車で寝てはいけない!


副題:通勤電車と成功の不思議な法則
著者:久恒 啓一  出版社:三笠書房  2006年6月刊  \1,050(税込)  173P


通勤電車で寝てはいけない!―通勤電車と成功の不思議な法則    購入する際は、こちらから


読み終わってから約1年。レビューも書かずに“寝かせて”おいた本を蔵出しして取り上げる。
レビューを書けなかった理由は簡単で、タイトルで想像する通りの内容だったこと。
通勤電車で寝てはいけない。自分の時間を大切にしよう。という著者の主張と、それを裏付ける自身の経験が多数挙げられている。
私のレビューはネタばらしを極力しない方針なので、個々のノウハウやエピソードは書かない。勢い、紹介する内容がほとんど無くなってしまう。
だから「読書ノート」に書けず、1年寝かせてしまった。


でも、「卒読ノート」なら書ける。お勧めポイントは別として、自分の感想中心に書くことにしたからだ。


本書を読んで、多くの内容に共感した。私も早起きして、通勤電車で座れる時間に乗るようにしている。もちろん寝たりしないで、貴重な読書時間に充てている。「通勤時間を大切にしよう」という著者の主張に、大筋では賛成である。


ただ、著者と私では仕事観が違う。
会社員として日本航空に勤務していた頃から、デキる社員を自負していた久恒氏は、早期退職して大学教授となった今でも、自己研鑽に余念がない。
かたや、私は、デキる社員を目指してはいるが、そんなにモーレツ社員(死語です(笑))にならなくっていいじゃないか。と考えている。
努力努力、頑張れ頑張れ、という上昇志向の人生に、少し疲れてきたのかもしれない。そんなに努力ばっかりしていて、いったい、人生の何を楽しむのだろう、と思う。


だから、何ヶ所か、久恒氏の“工夫”に反発を覚えた。
たとえば、通勤読書の内容。
久恒氏は、通勤電車はその日の仕事に向かうための準備時間なのだから、楽しみを目的とした読書を避けたほうがいい、と言う。
私は、朝から自分が楽しむための読書をしている。どうしても仕事の準備をしなければならない時は別として、家庭や通勤電車に仕事を持ち込みたくないからだ。


もうひとつ、子育ての話。
久恒氏は、子育ては親として当然の義務であると認めながらも、自分の生活リズムを守ることにした。子どもが夜中に泣いていても、起きない。「子どもにかまけてもいいが、睡眠不足で体を壊したり、仕事に支障が出たら元も子もない」と言い切る。
私は、子どもが夜中に泣いたとき、妻が起きようとするのを制して自分でだっこした。経験者は分かると思うが、夜泣きというのは、なぜ泣いているのか、いつ終わるのか見当もつかない。何をしても泣きやまないので、部屋中を歩き回りながら、「これがテレビだよー」「これが冷蔵庫っていうんだよー」と語りかけた、という友人の話を聞いたとき、大いに納得したものである。
私も、いつ泣きやむのだろうと閉口した。ちょうど長時間勤務が続いていたころで、睡眠不足に輪をかけることになったし、仕事に影響がなかったとは言わない。
それでも、私は起きた。仕事も大切だが、自宅にいる時くらい子育てに参加しなければ親の資格がない、と思ったからだ。


久恒氏のような心構えでなければ成功できないのだろうか。だとすると、私は成功者とお友達になれないなあ。