実践儲かる会計・儲からない会計


副題:ビジネスドラマで読む
著者:田中 靖浩  出版社:PHP研究所  2005年8月刊  \720(税込)  283P


実践 儲かる会計・儲からない会計 (PHP文庫)


会計には「財務会計」と「管理会計」の2種類ある、って知ってます?


簡単に解説すると、「財務会計」は法律で義務づけられているもので、株主や税務署などに外向きに報告するもの。
かたや、「管理会計」は、会社の戦略を考えるために自主的に行います。外部に発表する義務はありません。
その「管理会計」をドラマ仕立てでやさしく教えてくれるのが本書です。


戦略的会計って何? と、ちょっとお勉強モードで読みはじめました。
お勉強ですから、ドラマの内容なんて期待していなかったのに、「いるいる、こんな上司」とか、「こんな社長、いるわけないだろう」とツッコミながら、ストーリーのおもしろさにハマッてしまいました。


ドラマには、学生時代に同級生だった二人の主人公が登場します。
ひとりは、大手アパレルメーカーの営業マン。30色のカラー・バリエーションふんどし“ファイナル・サムライ”を担当することになりました。
もう一人もアパレル・メーカーの営業職ですが、会社は小規模です。急成長してきた会社を引っぱってきた社長がひらめいたのがスケルトン素材を使ったスーツで、その名も“ネイキッド・キング”。


二人は、ちょっと変わった新商品を押しつけられてしまい、どうしたらいいか途方にくれます。
どうやって世の中に送り出したらいいんだろう。どんな宣伝をすればいい? だいいち、値段はどう決めたらいいの? というところから戦略的会計、管理会計の考え方を学んでいきます。


大手メーカーの営業マンは、当初予定していた価格を上司の命令で40%も下げられます。目標売上げ額を達成するための販売数は、当初目標の40%増し……では済みません。66%増しになるのです。
やっとの思いで目標売上げ額を達成した営業マンに上司は言いました。
「売上げ目標は達成したけど、利益目標に届いていないぞ」
えーっ。利益目標を達成するには、どれだけ売ればいいの。原価構造って何? と少しずつお勉強が進みます。


それにしても、この上司の憎らしいこと。
いるよなぁ。こんなイヤなやつ。


かたや、小さい方の会社の営業マンも、ワンマン社長から次々と難題を与えられ、そのたびにボヤキながら一つひとつ解決していきます。


ステレオタイプといえば、その通りですが、結構リアルでしたよ。どこかのテレビのお勉強バラエティで使えるかもしれません。


ところで、“ファイナル・サムライ”という「ふんどし」の売上げを伸ばすストーリーは単なる夢物語と思っていました。
ところが、なんと、銀座三越でふんどしが売れに売れているそうですね。
年に200枚しか売れない商品だったのに、4月に「トリビアの泉」で取り上げられたのをきっかけに、今年に入って約8000枚も売れたとか。いまや、父の日の目玉商品だそうです。
テレビの威力はすごいですねぇ。


本書は、未来予測の書だったかもしれませんよ。