がんばらないでも幸せ


2005年2月刊  著者:横森 理香  出版社:祥伝社  価格:\1,470(税込)  203P


がんばらないでも幸せ―Try being!


ディズニー映画「リロ・アンド・スティッチ」の主人公を連想させるような愛くるしい著者の写真が魅力的で……、というのはウソで、ココロにしみそうなタイトルに惹かれて手に取りました。


本書執筆のきっかけになったのは、著者自身が死を覚悟した体験です。「ガンではないか」と自分で疑った時、もし自分が死んでもすぐに新しい母がきて子供も夫も問題なく過ごしていくに違いない。ああ、これですべてから開放される、と晴ればれしてしまったとのこと。
ずいぶん楽観思考だな(笑)と思いますが、40代に突入した著者は、「今日が最後の日だと思って楽しく生きるほうが、人生ずっとラクに生きられるんじゃないか」「幸せとは、何はともあれ疲れていないことなのではないか」と気づきました。
この「まえがき」に書かれた、著者自身が深く人生を見つめなおした経験にはグッと来ました。これは「生き方を考える」という内容だな、と予想してPART.1に読み進んだところ、本文は趣きが違っていました。むしろ「疲れないで過ごすための心構えとノウハウ」で、著者自身がどうやって生活しているか、ということに重点を置いています。著者のライフスタイルに共感する人は、とても参考になるのではないでしょうか。


ただ、私とは生活の仕方が違いますので、私自身の感想を言うと、「ちょっと手抜きし過ぎじゃない?」というのが正直なところです。
たとえば、著者は、子育てで頑張りすぎないためにフィリピン人のベビーシッターに子守りを依頼しています。どこかにちゃんと通ったことがあるのは義務教育の期間だけ、と言い切る著者には、保育園にあずけるために毎日の送り迎えをするのはムリ! というのがその理由です。著者のライフスタイルを参考にしようと思ったら、頑張らないでもやっていける収入が必要です。
また、疲れた日にはデニーズでブランチしたっていいじゃん、と著者は言いますが、本当の庶民はガストやサイゼリヤに行きます。デニーズは何かのお祝いのあるハレの日に、自分自身へのごほうびとして行くところなのです。
森永卓郎さんの言う「年収300万円の生活」では、著者のような優雅なことはできません。
ブランドやお化粧に高いお金をかけることを思えば、疲れないようにベビーシッターを雇うのは安いもの、と著者はいいますが、ブランド品も買えず100円化粧品で済ませている庶民主婦はどうすればいいのでしょう。
著者が小金持ちであることに無自覚であればあるほど、反感を持つ読者が多くなります。これでは、お金に余裕のある物書きが、「私の生活いいでしょー」と見せびらかしているに過ぎなくなるのでは? タイトルも「がんばらないでも幸せ」ではなく、「私は幸せでラクチン、何が悪いの!」がふさわしくなってしまいます。
せっかく良いこと書いているのに、もったいないように思うのですが……。
でも、おばちゃん街道まっしぐらの著者は、こんな中年男性の意見なんか聞く耳持たないのでしょうね。